「ゆきうさぎのお品書き」「ホテルクラシカル猫番館」などの人気シリーズで、食と人をめぐるハートウォーミングな世界を描いてきた小湊悠貴さん。このたび、文春文庫からは初めての作品となる『横浜元町洋菓子譚 春といちごのホームメイド』が刊行されました!
刊行を記念して、小湊さんにお話をうかがいました。
◆◆◆
子どものころの読書体験
――小湊さんは2013年に作家デビューをされています。小説を書こうと思われたきっかけは、何だったのでしょうか。
小湊 子どものころから作文は得意でした。いまも当時書いたものが残っているのですが、小学校3、4年生のときに、すでに「将来の夢は小説家」と書いていました。ノートに自分の考えたことを書き始めたのは、中学生くらいから。小説といえるようなものではなかったけれど、お楽しみ・趣味という感じでした。ファンタジーを読むのが好きだったので、「時空を超える」といったお話が多かったです。
大学生になってパソコンを買い、文章を打ち始めたものの、まだオチのない物語。初めて最後まで書き上げたのは、もうすでに卒業に近い時期でした。卒論と同時進行で、原稿用紙350枚くらいまで書いて、コバルトのロマン大賞に送ったのが初応募です。
――小説を書くことが、楽しかったのですね。
小湊 はい。卒業後は書店に勤めたのですが、書店っていろいろなジャンルを扱うから、勉強にもなりましたね。小説は趣味だったので、暇さえあれば書いて、その後も毎年応募しました。9~10年くらいかかりましたが、コバルトでデビューできたときは、本当に嬉しかったです。
読むほうももちろん好きで、欲しいといった本はわりと際限なく買ってもらえる環境だったのは、大きいです。母が海外文学好きで、『赤毛のアン』『あしながおじさん』『十五少年漂流記』を薦められたり、岩波少年文庫などを読みましたね。中学生からは、やっぱりコバルト系に傾倒。高校生くらいからは、「来月にこの先生の新刊が出る」というのを楽しみにして、お小遣いを貰うと買っていました。
最近またファンタジーを読むようになりましたが、上橋菜穂子先生の作品はとても好きで、ずっと憧れでもあります。
――ファンタジーでデビューされたあと、同じ集英社のオレンジ文庫で出された「ゆきうさぎのお品書き」で小料理屋、「ホテルクラシカル猫番館」でホテルの厨房を舞台に、人々の温かい交流を描き、人気シリーズになりました。
小湊 食べることはもともと好きですが、食べものの話をこれほど長く書くことになるとは、最初は全く思っていませんでした。
小説に登場させる料理は、自分で作れるものは作ってみますし、フランス料理みたいに難易度が高いものは、専門書でまず手順を確認します。いまは動画もありますから、それを見て頭に入れてから文章で組み直す。冗長すぎてもいけないし、必要なところだけをできるだけ簡潔に、分かりやすくまとめて一文にする。料理シーンを書くのは、とても時間がかかりますね。
表現では、五感を大切にしています。作っているときは香り、食べるときは見た目や食感を描写するようにして、バランスをとっています。
――作品に登場するお料理はどれも本当に美味しそうで、読んでいてお腹がすく理由が、よくわかりました!
