議長による採決の結果、委任状や議決権行使書もカウントしたが、わずかに4分の3に届かず否決されてしまった。ペット飼育可にするには、管理規約の改正が必要で、総会の定足数として組合員総数と議決権総数のそれぞれ過半数の出席、その総会に出席した組合員数と議決権数のそれぞれ4分の3以上の承認が必要なのだ。
承認されなかったのは、ペット飼育について「どちらでもいい」と思っていた組合員が、ペットアレルギーの人に同情をして棄権や否決に動いたのが理由のようだった。信子さんは、ガッカリして、正明さんにも結果を伝えた。
ペット可賃貸マンションへ引っ越すことに
その後、正明さんと何度も相談を重ねて、いまのマンションは一人で住むには広すぎるし、ペット飼育可の賃貸マンションに引っ越そうということになった。
正直なところ賢治さんとの思い出が詰まった部屋を引き払いたくはない。それに正明さんが生まれ育った実家ともいうべきマンションを売ってもいいものか。一方で、3LDKに一人暮らしは辛いという思いもある。
そんな時、正明さんの言葉に背中を押された。
「俺はね。実家がなくなるのは寂しいけど、それより母さんが寂しそうにしてるのが何より辛いんだよ。一緒に住むのもいいけど、気を遣うだろうし。それに住み慣れた街のほうが友達も病院も、買い物も楽だろう?」
幸い住宅ローンの返済も済んでおり、マンションを売却できたお金を老後資金にもあてられそうだ。
ペット飼育可の物件に住み替えるには、いまのマンションの売却と賃貸物件探しをしなければいけない。まずはマンションを売却する手続きから始めることになった。
いままでずっと同じマンションに住んでいたため、正直なところ、どう売却していいかわからない。正明さんの大学の同級生に、不動産屋をしている人がいるというので、まずはその人に相談してみることにした。正明さんとは、サークルが一緒だったそうだ。