「素ラーメン」は職人の苦肉の選択

 また、ラーメン店にとって、実はトッピングこそが創意工夫を発揮できる舞台でもある。炭火で炙ったチャーシュー、低温調理で仕上げたレアチャーシュー、味の染みた半熟味玉、ツルツルのワンタン……そうした具材の演出こそが、ラーメンを美味しそうな一杯として成立させてきた歴史がある。ゆえに、多くの職人は本来であればトッピングをしっかりのせたい。客を驚かせ、記憶に残る一杯を作りたい。その気持ちは当然だ。

 つまり、素ラーメンを選ぶということは、トッピングという表現の場をあえて削り、自らの持ち味を切り詰めながら一杯を成立させる苦渋の決断でもあるのだ。そこには、経営的に値上げに踏み切れないもどかしさと、それでも何とかちゃんとしたラーメンを出したいという職人の葛藤が滲み出ている。

 一部のマニア層は、こうした素ラーメンの美学に共鳴するだろう。しかし、あくまで現時点では通好みの領域にとどまっており、一般的な支持を得るにはまだ課題が多い。結局のところ、「素ラーメンブーム」と言われている現象は、必ずしも好んで選ばれているスタイルではない。

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 そこには、価格の壁と、それに伴うラーメン店の苦しい台所事情が影を落としている。職人たちのプライドと経済的現実とのギリギリの折り合いとして生まれた、苦肉の選択肢なのだ。

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