過去の後継者と異なる動きをする“納得の理由”

 どうして、ジュエ氏の場合、過去の後継者と異なる動きをするのか。それは両親である金正恩夫妻の「心配」が原因だと思われる。金正恩氏は現在、42歳と推定されるが、心臓疾患や痛風、糖尿病などに罹患している可能性が指摘されている。金正恩氏が突然、職務不能になる事態も考えられないわけではない。

 現在、「白頭山血統」と呼ばれる金日成主席の子孫で、公職に就いているのは金正恩氏と金与正党総務部長しかいない。金与正氏は最近、閑職とされる総務部長に就任したが、習氏の訪朝の際には、しばしばその姿が映像に捉えられ、健在ぶりをアピールしている。閑職に退いているとはいえ、今、このタイミングで金正恩氏が倒れれば、「白頭山血統を押し頂いているから、自分たちも権力の座に就いていられる」という「赤い貴族」たちが金与正氏に次の最高指導者に就くよう要請することも想像に難くない。

金与正氏 ©時事通信社

 その場合、公職に就いていないジュエ氏は母親の李雪主氏ともども、北朝鮮の権力の中心からはじき飛ばされる恐れがある。金正恩夫妻は、そういう事態を避けるため、早くからキム・ジュエ氏を公開し、「次はこの子が後継者だ」と暗黙のうちにアピールしているのだろう。もちろん、「白頭山血統が引き続き、権力の中心に座る」と示すことは、金正恩氏自身の権力の安泰にもつながる。

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 可哀想なのは、ほぼ10歳だった2022年11月から公の場に引っ張り出されることになったジュエ氏だろう。ジュエ氏が通学したり、朝鮮少年団で活動したりする姿は伝えられていない。一度でも、「後継者」として扱われた以上、世間から隔離され、友達と遊ぶこともない毎日だろう。金正恩夫妻にとっての「子供の幸せ」とは、権力の維持であって、子供らしい毎日を過ごせるようにするということではないらしい。

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