「何しに来た」「帰れ!」
私は毎週金曜日に娘の百々果を連れて真鶴の家へ通っていた。パパの「生存確認」のためだ。このころはまだ百々果が日本にいたので、パパとママと家族4人で一緒に週末を過ごす。
「パパ、元気?」
「何しに来た」
「様子を見に来たんじゃん」
「帰れ!」
私と顔を合わせるたびに憎まれ口を叩く。些細なことで怒る。「こんなこと言わなかったのに……」。他の人はもちろん、私たち家族を罵ることなんてなかったから、パパの変わりっぷりが信じられなかった。
テーブルの上のものを動かすと、
「触るんじゃない!」
と怒鳴る。
家族で一緒にテレビを見ていると、出演しているお笑い芸人を指差してこう言う。
「なんなんだおまえは。おまえなんかがテレビに出るんじゃない!」
「帰らないで……」限界を迎えていたママ
パパはすべてのものにイライラしていた。
私が我慢できなくなって飛び出そうとすると、ママが私の腕をつかんで引き留める。そして懇願するようにこう言った。
「帰らないで……」
ママも、毎日パパに暴言を吐かれていた。私が週末に真鶴を訪ねたのは、ふたりの間に入って、ママを守るためでもあった。変わり果てたパパとふたりだけで暮らすことに、ママも限界を迎えていた。
「そんなに嫌なら、透析やめちゃえば!」
「おい、アンナ。おまえはいいよな。好きなところに行けて」
「おまえ、ムカつくよ。普通に歩けて、普通にしゃべれて」
そのころのパパは元気な人を見ると腹が立ったらしい。半分は自分の体調が悪いことからくる嫉妬だ。私も標的になった。
そう言われた瞬間、私はキレた。

