他国には拒否、中国には譲歩

 Facebookのチームは当初から、中国のユーザーのデータを中国側の条件のもとで中国国内に保管することに合意していた。過去にロシアやインドネシア、ブラジルから同じ要求があったときは、いずれも拒否したというのに。私自身、大統領や政府高官に対し、Facebookは決してそのような対応はしないと明言したうえで、政府がデータにアクセスしたり差し押さえたりするようなことは絶対に起きないと確信できる国にのみ、サーバーやデータセンターを設置していると強調してきた。

 Facebookのデータウェアハウスに保管されているすべてのデータに中国政府がアクセスする可能性について、ある報告書には「かならず起きると考えてよい」と乾いた調子で記されていた。

 これはまさに、Facebookがアメリカ政府に対しても――国家安全保障書簡が送られてきたときでさえ――断固として拒んできた種類の、政府によるユーザー情報の収集そのものだ。

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「一線を越えた」と批判したはずが

 2013年、エドワード・スノーデンの暴露により、国家安全保障局がFacebookに侵入してユーザーのデータを収集していた事実が明らかになったとき、マークはオバマ大統領に電話をかけ、政府による監視と「それが私たちの未来に与える損害」についての不満を伝えた。

 マークとジョエル(編集部注:当時の公共政策担当幹部)はホワイトハウスを訪れてこの件に関して大統領と会談し、マークは「政府は判断を完全に誤った。明らかに一線を越えた」と述べた。ところがそれからまもなく、マークは中国に対してはるかに有利な条件を提示していたことになる。

 インターネットを下支えしているインフラは、海底ケーブルやデータセンターに象徴されるように、巨大な規模のものであり、莫大な投資と綿密な計画、確実な実行が必要とされる。Facebookは、中国進出をめざして大規模プロジェクトを始動すると同時に、Googleや中国企業パシフィック・ライト・データ・コミュニケーションと協力し、中国本土に接続する海底ケーブルの敷設に着手した。中国事業を支えるためのインフラだ。そして、中国とアメリカを直接つなぐ初の海底ケーブルだった。