リスクを承知で進めた海底ケーブル計画
中国がこのデータを傍受するきわめて大きなリスクがあることは明白だ。しかも、危険にさらされるのはFacebookのデータだけではない。この海底ケーブルは、インターネット全体の通信量のかなりの部分を引き受ける設計になっていた。これまで誰もこの二国をケーブルで結ぼうとしなかった理由はそこにある。
Facebookはそのリスクを承知していたが、まるで気にとめなかった。いや、それどころか、マークにとっての最優先事項――中国進出――のためには、ケーブルがどうしても必要だった。Facebookは中国に通じるデータパイプライン建設に多額の資金を投じたが、のちに中国共産党によるデータ収集を懸念したアメリカ政府によって阻止されることになった。
Facebookが数少ない「越えてはならない一線」として堅持してきたものの一つに、「中国国外にいるユーザーのデータに、中国はいっさいアクセスできない」という原則がある。しかし社内資料はまったく別の物語を語っていた。
国外ユーザーのデータも危険にさらされて
Facebookは「中国のユーザーの体験を高速化することを目的として、PoPアクセスポイントを展開する」というのだ。Facebookは世界各地ですでに同様のPoPを運用していた。基本的には、ユーザーの近くにデータを配置することで、サービスの速度を向上させるのが目的だ。しかし私の理解では、中国国外にいる人が中国国内にいる誰かとやりとりした場合、そのデータがPoPに保存される可能性がある。中国法に従えば、中国政府はそれらにアクセスする権限を有している。
国外ユーザーのデータが中国共産党に渡る可能性に関しては、ほかにも懸念事項があった。〈オルドリン・セキュリティ・リスク〉と題された別の文書は、中国側のコンテンツモデレーターが国外ユーザーのデータを直接に、あるいは認証情報を共有することで中国政府に提供してしまうリスクが指摘されている。
これはFacebookのネットワーク内部へいっそう深く踏みこんでくる諜報活動とあいまって、きわめて重大な懸念材料だった。Facebookの経営陣は、WhatsAppをはじめとするメッセージングサービスの社内ネットワークへの侵入の試みなど、中国の諜報活動に起因するとされる動きについて説明を受けていた。
