「映画よりも映画語りの方が面白い」
こうして宇多丸さんにパーソナリティとしての資質があることが確信できたわけだが、その強みといえば映画評。そうなるには少しばかり助走期間があった。
では、そこにいたるまで、どのようにして強みを見つけていったのか。
まず『タマフル』は全体的にカルチャー誌のような作りで、音楽、映画、ゲームなどの話題を独自の視点で特集し、バラエティ的な演出で楽しく伝えるイメージで作っていた。サブパーソナリティ的な人たちにも協力してもらった。前述のJポップDJミックス企画にはDJミッツィー申し訳さんがレギュラー参加し、また、コラムニストのしまおまほさんが登場して新人パーソナリティの宇多丸さんにラジオについて教えるコーナーなど、いまに続くような企画もスタートしていた。
それに加えて、さらに企画を模索するために週替わり枠も用意した。
まずは宇多丸さんが得意なことを色々やってみよう。「技のデパート」のポテンシャルを知りたい。まずは得意なアイドルソング評の企画でどんなことができるか。宇多丸さんからある日、こんな提案があった。
「モーニング娘。の『笑顔YESヌード』って曲がすごく好きなんだけど、俺の考える理想のミュージックビデオを再現して語りたいんだよね」
今でこそ「俺の考える◯◯」的な妄想系は定番だが、当時はまだ珍しかった。
そして映画評がコーナー化する流れはこうだ。「どうしても紹介したい映画がある」という宇多丸さんが、当時公開されていたが世間的ヒットはしていなかった『アポカリプト』(2007年)を史上最高の映画と激賞する回だ。劇場に行き輸入版DVDを買い、脳内再生できるほど鑑賞して魅力を語りまくる回は、宇多丸=映画となる第一歩目のような回だった。聴いた上司からは「あの熱弁を聴いて観たくなり、週末に劇場行ったけど良さがわからなかった」と言われた。私は「なんだよ、映画センスのない上司だな」とはおもわなかった。むしろ「映画よりも映画語りの方が面白い」ってすごいということだ。
「やらされるのが得意」な性格を生かして作品を自分で選べないスタイルに
転機となったのは『キサラギ』(2007年)のレビュー回。かなり厳しい目線で批評したのだが、これを聴いたベテラン放送作家の妹尾匡夫さんが「宇多丸くんの意見にまったく同意だ」と番組にメールをくれたのをきっかけに、番組アドバイザーとして参加することになった。
