パーソナリティの才能とは
では、宇多丸さんの映画評が、なぜここまでリスナーから支持を得ることができたのか。それは、映画を正直に批評したからだ。
「ラジオで嘘をつくとバレる」とよく言われるが、それは長尺であることや、情報が声だけに集中すること、編集ができない生放送であることなど様々なラジオ的な環境が作用している。
体調が悪いのに「元気です!」と大声で言っても無理してるのがバレたりする。逆にいえば、嘘くさい、上辺だけのトークばかりしていたら信頼をなくすということでもある。
対人関係とも似ている。
なかなか腹を割って話さない人のことは信用できない。しばしば「パーソナリティに向いてるのはどんな人ですか?」と質問されることがあるが、私はまず「正直な人」と答える。これがラジオの基本姿勢だからだ。
宇多丸さんの映画評も、ラジオのこの流儀でやっていた。知られていない映画でも面白ければ徹底的に褒めてプッシュする。ヒットしている映画でも、面白くないものは面白くないと言う。真摯に作品と向き合う。もちろん正直にやり続けることは楽ではない。ときに摩擦を生むこともあったが、提灯記事のようなレビューをしていては信用をなくす。譲れないところはある。
「信用」が大切なのは、ラジオ番組すべてに共通する。
よく業界内で言われるのは「テレビショッピングよりも、ラジオショッピングの方が返品率が低い」という話だ。映像を目で見て買った商品よりも、モノを見ないで買ってる方が返品されないのはなぜか。これは信用しているパーソナリティが話していることも理由だ。
そもそも商品を見てないから「思ってたのと違った」と感じようがない。かつて『ゆうゆうワイド』では、何十万円もする宝石が売れたりしていたそうだ。
すでに時代は「正直レビュー」しか信用しないようになっている。
ユーザーがメディアの提灯記事的なものを見分けられるようになっている。
ラジオは昔から正直だ。ラジオでは正直者が馬鹿を見ない。正直の頭に神宿るのがラジオだ。

