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「テレビ天皇制」とは何か?

――ところで、御厨さんは新刊『平成風雲録』にもお書きになっているように、天皇の生前退位をめぐる「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」の座長代理を務められました。あの「生前退位のおことば」はビデオメッセージ。まさにテレビを通じて発されたものでしたよね。

御厨 まさに「テレビ天皇制」。僕は現天皇・皇后両陛下のいわゆる「平成流」のスタイルをそのように呼んでいるんですが、生前退位について国民の実に8割以上がそれを支持する結果になったのも「テレビ天皇制」だからこそと考えているんです。

――テレビ天皇制というのは、どういうことなんでしょう。

御厨 かつて政治学者の松下圭一が「大衆天皇制」と呼んだものが、平成の現在においてテレビの力をより大きく借りて展開されていると思うんです。たとえば両陛下の慰霊の旅、そして自然災害の被災地に積極的に赴いて、避難所の床に膝をついて被災者と語るあの姿勢。両陛下にとってはこれも一つの祈りの形でしょう。それが、新聞はもちろんテレビによって映像として国民に広く伝わる。これは、間違いなく天皇制と国民を近づける成果を生み出しました。

 

――大衆文化であるテレビが国民と天皇を強く結びつけたと。

御厨 それも親しみを持つ形で。振り返ってみれば両陛下の皇太子・皇太子妃時代におけるご成婚パレードは、日本にテレビを普及させた大イベントでしたよね。今回の「生前退位メッセージ」は、まさに両陛下が意識的・無意識的に展開してきた昭和から平成に至る「テレビ天皇制」の象徴的な出来事だと感じています。

「いいとも!」中居発言とタモリの反応をじっと見ちゃった

――さて、『平成風雲録』には「笑っていいとも!」グランドフィナーレについてのエッセイも収録されていて驚きました。御厨さん、バラエティもご覧になるんですね。

御厨 観ますよ、ぼやーっとね(笑)。「いいとも!」の最終回特番は偶然観たんですけどね、面白かった。何が面白かったって、SMAPの中居発言ね。出演者がグランドフィナーレの名にふさわしく祝賀ムードでやっているところ、彼だけがタモリに向かって「バラエティーに終わりはない」「こんな形で終わるのは残酷だ」と一人真面目なことを言った。これを受けたタモリの表情がなんとも言えないものだったんですよ。普段だったらジョークの一つでも言って受け返す場面で、かすかに頷くような微妙な仕草をしたように見えた。

 

――細かいところを観てますね!

御厨 バラエティ番組を見ていて面白いと思うのは、こういう普段見せない真剣な言葉や本音を吐くとき、その表情が垣間見えるとき。コンビ芸人の場合だと、相方がその真面目な発言にふっと引いたりしている様子とかね、じっと見ちゃうんです(笑)。