10年前の古いホームページが、そのまま使われていた

 2人が会社のホームページを開くと、元之さんが10年前に自作したサイトが、そのままの状態で残されていた。商品ページには素人が撮影したとわかる商品画像が1枚と、最低限の説明文が載っているだけ。毎日500~600件届く注文は、両親がすべて手作業で出荷していた。

 そこで、まず雄哉さんは自身のプロデューサー経験から、その道のプロフェッショナルとの連携を次々に進め、広報やEC運用は外部パートナーと提携した。一方、資金を貸す側から借りる側になった幸祐さんは、知見を生かしながら盤石な財務体制を整え、生産・発送業務の効率化、アウトソーシング化も図った。

 加えて、既存のスポンジ・固形洗剤を軸に、2人それぞれで新しいブランドを立ち上げた。

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 2022年に幸祐さんが立ち上げた「ao(アオ)」は、コミュニティ内でインタビューやアンケートを実施し、ファンと一緒に製品作りを進めた。2023年に雄哉さんが立ち上げた「TEILE(テイレ)」は、プロダクトデザイン会社と手を組み、ギフト需要を意識した高級感のあるデザインに仕上げている。

キッチンスポンジや洗剤といった日用品をリブランドする形で生まれた「ao」(公式サイトより)
TEILEでは、食器洗いという「作業」を「手入れ」として再定義した(プレスリリースより)

 さらに、オンライン販売がメインだったところ、2024年以降は「ロフト」や「ハンズ」などの実店舗での取り扱いを始め、オフラインの接点を増やした。2025年には従来品より小ぶりな食器用固形洗剤「サンサンウォッシュ」を発売し、スポンジユーザーに同社の原点となる製品のPRを進めている。

 こうして運営体制や商品のラインアップを変えた一方で、変えなかったものもある。それは、前述した製品のレシピのほかに、「お客さんの声に応え続ける」という企業姿勢だ。

 固形洗剤もスポンジも、消費者の「欲しい」という声をきっかけに販売し続けてきた。1件1件電話で注文を受けていた時代を経て、「サンサンスポンジ」が話題になり多くの顧客とやりとりするようになった現在においても、それは変わらない。

 そのことを裏付けるような印象的なエピソードがある。それは、旅行で日本に来ていた外国人が「『サンサンスポンジ』が欲しい」と問い合わせてきたときのことだ。

「まだオンラインのみで販売していたときに、『チェックアウトの時間までに、ホテルのフロントに配送してもらえないか』と連絡を受けたんです。でも、配送業者だと指定された時間には間に合わないことがわかって……。

『どうしようか』とみんなで相談して、私が直接届けに行くことにしたんです。だって、どうしてもうちのスポンジが欲しいと言ってくださる方がいるなんて、そんなありがたいことがほかにありますか?」(晴美さん)

 相手もまさか、販売元の人間が届けに来るとは思わなかっただろう。「何を望んでいるのかを察知して、先回りして動く」——晴美さんを筆頭に、顧客の想像を超えるホスピタリティ精神は、変わらず同社に息づいている。