スーパーやドラッグストアで、100円台で売られていることがほとんどのキッチンスポンジ。一般的にはこの程度の価格帯が当たり前とされているが、楽天市場では1個400円前後のスポンジが、9年連続で1位を獲得し続けている※。作っているのは社員4人(取材時)のファミリー企業だ。
※楽天市場「掃除用品スポンジ・たわし・ブラシランキング部門」、2018年8月~2026年7月現在
スポンジが誕生したのは約50年前だが、広く知られるようになったのはここ10年ほど。驚くことに、ほぼ口コミだけで年間250万個が売れている。なぜ、誕生から半世紀後にこれほどの支持を集めるようになったのか。その答えを探ると、大手メーカーが真似しようとしない、ものづくりの哲学が見えてきた。
1年使ってもヘタらない「リッチなスポンジ」として話題に
「さぁ、どちらが新品でしょう?」
2013年、KBC九州朝日放送の情報番組『アサデス。』で、2つのキッチンスポンジがアップで映されていた。それは一般の主婦が「使ってよかったグッズ」を紹介するコーナーで、1つは新品、もう1つは1年使用したものだという。普通、スポンジを1年も使い続ければ、ボロボロになってしまうだろう。けれど、不思議なことにこの2つは、まったく見分けがつかなかった。
「正解は……こちらです!」
主婦が指差したスポンジは、新品さながらの厚みがあり、グッと胸を張っているように見えた。
放送が終わると、都内にある小さな会社の一角で、電話が鳴り始めた。「今さっきテレビで紹介されていたスポンジが欲しい」と商品を求める客が殺到したのだ。注文の電話は、それから3日間鳴り止まなかった。
大手メーカー3社によると、キッチンスポンジは3~4週間で交換することが推奨されている。小売店では100円台で売られており、「短期間で使い捨てする消耗品」としてほとんどの人が認識しているだろう。だからこそ、テレビ番組で1年使ったスポンジが新品同様の姿形をしていたことに、多くの視聴者は驚いたはずだ。
このとき取り上げられたのは、株式会社ダイニチ・コーポレーションが製造・販売する、「サンサンスポンジ」だ。1個400円前後と競合商品より値は張るが、前述したように楽天市場で1位を獲得し続けている。
実はこの商品、スーパーやドラッグストアではほとんど販売されていない。にもかかわらず、年間250万個が売れているという。

