一般的なキッチンスポンジが100円台で売られているところ、「1個約400円」と強気の価格設定ながら飛ぶように売れているスポンジがある。父と母、息子2人で経営する(取材当時)小さな企業が売っている「サンサンスポンジ」だ。
同社は固形洗剤も手掛けており、もともとはその洗剤のオマケとして生まれたという「サンサンスポンジ」は、なぜ年間250万個も売れる大ヒット商品となったのか。
「スポンジらしからぬ色」がヒットの起爆剤に
泡立ちが早い、泡切れ・水切れがいい、乾燥が早い、食品の色が移りにくい。なにより、半年以上使えるほど丈夫で長持ち——これは従来のキッチンスポンジのイメージを覆す、株式会社ダイニチ・コーポレーションの人気商品「サンサンスポンジ」の特徴だ。1974年の開発以来、家族経営で粛々と販売を続けていたが、2013年のテレビ放送をきっかけに楽天市場(掃除用品スポンジ・たわし・ブラシランキング部門)にて9年連続の1位を獲得している(2018年8月~2026年7月現在)。
2014年6月、黒とグレーのモノトーンシリーズを発売すると、人気ブロガーが「おしゃれなキッチンにも合う」と投稿したことで大バズり。Instagramのハッシュタグ投稿が3000件を超え、瞬く間に若年層にも知れ渡った。
「あの頃、スポンジっていうと黄色とかオレンジとか、ビタミンカラーが多かったんです。うちも緑一色からバリエーションを増やそうと思って、黒を発売したんですけど、『キッチンに黒って……』と困惑したことをよく覚えています。
その話をしたら、元同僚が背中を押してくれて、チャレンジのつもりで新カラーとしてひっそりとリリースしました。それがこんなに人気が出るとは、彼女に足を向けて眠れません(笑)」(同社社長の妻で、ボードメンバーの吉田晴美さん)
商品の認知が広がると、さまざまな小売店から問い合わせが入るようになった。なかには「1万個売る代わりに、仕入れ値を下げてほしい」という申し出もあったが、CEOの吉田元之さんは、その誘いをきっぱり断ったという。
「大量に売ってもらえたとしても、ブランドや商品価値をコントロールできなくなるじゃないですか。そうすると、この先商品が売れたときに、その会社に委ねるしかなくなってしまう。『武士は食わねど高楊枝』じゃないですけど、正規の値段で商品価値を理解してもらえる売り先とだけ取引しようと、ひたすら我慢しました」
値段も売り先も、自分たちで決める。その一点は売れない時代も、売れるようになってからも、変わらなかった。

