もともとは「洗剤のオマケ」だった

「サンサンスポンジ」を生み出したダイニチ・コーポレーション(旧:大日化成株式会社)は、1973年に吉田雄一さんによって大阪市で創業された。現在CEOを務める吉田元之さんの父に当たる人物で、もともとは家業であるクリーニング店の職人だった。

ダイニチ・コーポレーションは、先代の吉田雄一さん(右)が創業した。左は元之さん(写真提供=ダイニチ・コーポレーション)

 雄一さんはあるとき、妻・圭永子(けえこ)さんが「食器用の合成洗剤を使うと手が荒れる」と愚痴をこぼしているのを見て、「手肌にやさしい食器用洗剤を作れないか」と考えるように。昔から手先が器用で、なんでもとことん突き詰めるタイプだったことから、独学で試作を開始。しばらくすると、「これだ」と思うレシピが完成した。市場では液体洗剤が多かったなか、生み出されたのは世にも珍しい、固形の食器用洗剤だった。

 しかし、製品への自信とは裏腹に、これが思うようには売れなかったらしい。近所の婦人会や、団地の世話役などに営業活動を行うもうまくいかず。最後はやけになって「自由に使ってください!」と全部無料で近所に配ってしまったそうだ。

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食器用固形洗剤は、今もかまぼこ製造用の機械で手作りしている ©細田忠/文藝春秋

 その後、洗剤のことは一旦諦め、仕事を探しながら何とか食いつなぐ日々を過ごす。だが、それから3年ほどが経ったある日、一本の電話がかかってきた。

「前に配ってくれた洗剤が欲しいんですけど、買えますか?」

 団地の世話役からの連絡だった。よく汚れが落ちるのに、手が荒れない。しかも、液体洗剤より長くもつと口コミが広がり、そこから一気に何百個もの注文が入るように。その後も、以前配った人や評判を聞いた客から注文が入り、ようやく生活ができるようになった。

 冒頭で紹介した「サンサンスポンジ」は、この固形洗剤に最も適したスポンジとして、後に開発されることになる。

 当時、小売店で販売されていたのはもっぱら液体洗剤向けのスポンジで、固形洗剤には不向きと言わざるをえなかった。そこで、「せっかく開発した洗剤に最適なスポンジを自分で作ろう」と電話帳を片手に、協力してくれそうな企業に片っ端から連絡した。

 すると、事務所の近くにポリウレタンの製造会社を見つけた。ポリウレタンはプラスチック材料のひとつで、クッション材や断熱パネル、合成皮革(人工皮革)に加工される素材だ。けれど、その頃は開発からまだ十数年程しか経っておらず、どのような用途なら素材を生かせるのか、模索していたタイミングだった。

 そこへ、「固形洗剤にぴったりのキッチンスポンジを作れないか」と相談を持ちかけると、すぐに意気投合。どのくらいの密度がいいのか、どんな硬さが適しているのか——何度も試作を重ねながら、共同開発を進めていった。こうして生まれたのが、「サンサンスポンジ」の原型となる商品だ。

 当初、出来上がったスポンジは「お客様の喜ぶ顔が見たい」と、洗剤のオマケとして配っていた。ところがしばらくすると、「このスポンジだけ売ってほしい」という声が相次いだことで、商品化に踏み切ることに。