「スティーブはレオナルド・ダ・ビンチみたいな人でしたよ。技術者でありながら、芸術家でもあった。亡くなったのはとても悲しいです、彼はよき友人でしたから」

「結局、僕が正しかったわけです」

 私たちはジョブズを偲んで黙祷を捧げた。本当なら、シリコンバレーでは、プログラマーだった共同創業者のスティーブ・ウォズニアックのほうがジョブズより崇拝されていると指摘してもよかったのだが、それではあまりに心が狭いというものだ。欠点はいろいろあったが、ジョブズはやはり左脳タイプと右脳タイプを組み合わせた稀有な存在であり、アップル旋風は優れた技術力だけでなくデザイン性もあってこそもたらされたものだった。

「スティーブは僕のことをクレイジーだと思ってましたよ。みんな僕をクレイジーだと思ってた。ボーダフォンなんて、よほどクレイジーだと思ったのか、会社を買う資金まで貸してくれましたからね」。そう言って孫は笑った。

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「でも僕にはアイフォーンがすべてを変えるとわかってました。結局、僕が正しかったわけです」

 孫は、まだ存在もしていなかった未来の必需品に賭け、ジョブズとの握手だけを頼りに154億ドルもの大金、当時のソフトバンクの企業価値の4倍近くをボーダフォンジャパンの買収に投じた。その9割はレバレッジ(借入)で、うち46億ドルはボーダフォン自身からの融資金だった。それもこれも、顧客も資金も失いつづけていた一企業を買収するために。だがジョブズは約束を守り、スマートフォンは世界を変えた。ソフトバンクは日本におけるアイフォーンの独占販売権を得たおかげで、投資ビジネス史上まれに見る大逆転劇を実現したのだ。当初の出資額およそ20億ドルは、2019年の上場時には約420億ドルの価値にまで達した。

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