富士総合火力演習から姿を消した装備
さて、UAVやUGVと違い、逆にあまり姿を見せなくなった装備もある。今回は、それが10式戦車であった。
小泉防衛相も演習前の大臣訓示で「今年4月21日、大分県日出生台演習場で発生した10式戦車砲塔内での砲弾暴発で3名の自衛官が殉職された事故原因を究明するのが急務である」と述べた通り、それが判明するまでは「自衛官自身の命、安全を守る」ためにも実弾射撃を中止せざるをえないのである。
今回の総火演でも後段演習のフィナーレで3両の10式戦車が走り抜けていっただけで、1発の実弾射撃もなかった。というより、不肖・宮嶋もその存在に気づかなかったくらいである。
また事故原因と関係あるかどうかは分らんが、10式戦車と同じ120mm滑空砲を装備する90式戦車は、今回の総火演では炸薬のない「訓練弾」が射撃された。
今年5月、やはり小泉防衛相が視察したフィリピン・ルソン島北西部の北イロコス州で行われた陸上自衛隊の88式地対艦誘導弾の「実弾射撃」訓練では、ミサイルに炸薬を詰めた弾頭を搭載した「実弾」が使用されている。その一方、この「炸薬無し」とはあまり聞き慣れないが、実は約1年前の北海道、新ひだか町の静内対空射撃場で行われた国内初の88式地対艦誘導弾の「実弾射撃」訓練でも、炸薬のない「訓練弾」が使用されている。
さらに標的も実物ではなく、曳航された小型ボートの上空に電波を発し、レーダー上にのみ出現させた架空の目標。そのため、命中判定も標的ボートの上空を通過したことをもって行われたのである。
これまた「架空」の話で恐縮やが、スタジオジブリの長編アニメ『天空の城ラピュタ』では、悪漢が人質にとったヒロインを傷つけないよう「信管を抜いた」砲弾を使用するシーンがある。あれもまあ「炸薬無し」同様、砲弾を爆発させない処置である。
映画では、ロボット兵に命中した砲弾は爆発せず、強い衝撃だけ与え、無力化させている。実際の世界でも、射撃時の衝撃波や熱風、轟音こそ「実弾射撃」と全く変わらなかったが、着弾しても炸薬がないので爆発も起こらず、砂煙がパッと舞い上がっただけであった。
そんな戦車の実動部隊が本州からいなくなり、しばらく経つ。その姿を、しかもその実弾射撃が見れるのは、ここ富士の総火演だけという貴重な機会やったのである。


