──扱いの差を感じた?

さしみちゃん 私が美術部に入って頑張ってても「絵はわかんないから」と興味を示さなかったのに、サッカーにはどんどん詳しくなっていく。家庭での会話もサッカーばかりなのにうんざりして、親に「なんで弟のサッカーの話ばかりするの? どうして弟の応援には行くの?」って聞いたんです。そしたら「送り迎えしてるし、この間も絵の具買いに連れて行ったじゃん」って言われて。

──頑張ってることに関心を持ってほしいのに。

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さしみちゃん でも当時はそのもやもやが言語化できなくて、親に伝えられなかったですね。親に悪気がなかったのはわかるし、前例がない障害がある私がどうやったら一人で生きていけるかを親なりに必死に考えて、なるべく甘えさせないようにしてたのかなとは思うんですけどね……。愛情はあったけど、とにかく言葉が足りない家庭でした。

 

──進路などについてはどんな方針だったんですか?

さしみちゃん 高校は定時制でみんなと楽しく過ごしてたんですけど、中退してとび職に進む人も多い学校でした。その中にいると力仕事ができない自分のハンディキャップを意識してしまって、手に職つけないとまずいからずっと好きだった美術を仕事にしようと考え始めました。

 ただ美大に行くとなると画塾のお金も高いので夏期講習だけ通わせてもらって、あとは美術部の先生に放課後に教えてもらったり、家でひたすら自主練して奇跡的に日芸に受かったんです。

美大の学費を稼いだ「オススメできない」方法

──美大というと入ってからもお金がかかるイメージですが。

さしみちゃん 学費は奨学金を借りたんですけど、授業で使う定規が1つ1万2000円とかの世界で、道具だけで半期で90万円かかるんですよ。家にはお金がないから自分で稼がなきゃいけないけど、体的に飲食店とか販売のバイトはできない。それで最初はチャットレディをしてました。親にも「ゲームしてる」って秘密にして、ウィッグを着けて顔がわからないようにして。

経済的な苦労をしながらも美大をみごとに卒業

──危ない瞬間とかはなかったのでしょうか。

さしみちゃん ありました。局部を見せてくる人とかいましたしオススメはできないです。ただ私は他に選択肢がなくてそれしかお金を稼ぐ方法がなかったんですよね。美大って家がお金持ちな人が多くて周りに奨学金を借りてる人はいなかったですし、作品を作るのに時間が必要だからバイトしてる人も少ない。それに2年生までの校舎にはエレベーターがなかったから、本来は2年生までに履修する講義を3年生以降で取らなきゃいけなくて。