ミシュランガイドで17年連続三つ星を獲得する京料理の名店「菊乃井 本店」の若女将・村田紫帆さん(43)。“料亭の長女”として生まれ育った村田さんに、次期4代目となる夫との結婚のこと、大女将である祖母とのエピソードを伺った。(全4回の2回目)
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「苗字は村田に」「私は若女将として働かないと」
――夫の知晴さんは、元商社勤務のサラリーマンで、料理はつくったこともなかったと。料理未経験ということに対して、不安はなかったですか?
村田紫帆さん(以下、村田) それはとくになかったです。どちらかというとそのときは「菊乃井」から逃げたい気持ちが強かったので、別の道ができるんじゃなかろうかと。
――サラリーマンの妻になってもいいと。
村田 なったら違う世界があるんじゃなかろうかと。
――知晴さんとお付き合いされることになって、二重の意味で解き放たれたといいますか、長年にわたるお見合いからも解き放たれ、ご実家の重圧からも。
村田 苗字は村田になってもらわないとあかんよということと、私は若女将として働かないといけませんということは、お見合いの相談をしていたときから(知晴さんに)話してはいたんですが、そこから抜けられるかもしれない。抜けられたら抜けられたでいいし、無理やったら無理やったでいいと。「料理人じゃないと」って思いすぎていたら、たぶん結婚できていなかったと思います。
自分にとって“ぴったりの”相手だった
――変な言い方ですけど、ちょうどよかったといいますか、ちょうどいいっていうのも失礼ですけれども。
村田 たとえば夢を持っている方とか、こういうことがしたいという気持ちが強い方は、自分がその方を好きになったら応援したくなってしまうので、逆に「夢はないですか?」と知晴さんに質問してみたんです。
――なんて答えられたんですか?
村田 「ない」って。別に夢はないって言われて、ふつうはマイナスポイントでしょうけど、私にとっては安心材料になった。
――夢はない。
村田 夢はないというか、「与えられたことを精一杯する時期だと思ってる」と言われた記憶があります。たとえばいつか独立して雑貨店を開きたいみたいな夢があったら、「菊乃井」に入ってもらうのは申し訳ないので。
――ぴったりだったと。
村田 「それならいいですね!」みたいな。
――知晴さんは「菊乃井」の存在も、紫帆さんのご実家が「菊乃井」であることも、結婚が決まるまでまったくご存じなかったと。あえて言わなかったのですか?
村田 隠してはなかったので、言ってたと思います。
