子どもが生まれるまでの苦悩、子育て、後継者問題――。京都の料亭「菊乃井」の“跡取り”として育った村田紫帆さん(43)に、いつの時代も誰もが気になるパートナーである夫との関係、5代目になるかもしれない小学1年生の息子のこと、若女将としてのこれからについて伺った。(全4回の4回目/最初から読む)

村田紫帆さん ©志水隆/文藝春秋

◆ ◆ ◆

夫が苦労する姿を見て、離婚まで考えた

――ご結婚されて、10年。壁にぶち当たったことはありますか?

ADVERTISEMENT

村田紫帆さん(以下、村田) 変な言い方かもしれませんが、知晴さん(夫)がここ(「菊乃井」)に馴染むまで、やはり本人が一番しんどかったと思うんですね。自分でいろいろ考えて動いていく人なので。

――まずは下足番からやらせてほしいと。

村田 「誰にも言われてへんのに、そんなんやってたわ」って、いまでは笑いながら言ってはりますけど、やっぱりしんどかったと思うんですよね。

――どういうところがしんどそうでしたか?

村田 結婚して生活が変わるだけじゃなく、10年間サラリーマンとして働いてきた自分への自信とか、築いてきた人脈とか、全部が全部使えない世界じゃないですか。もし仕事を辞めずにサラリーマンをしていたら今頃こうなっていたかもしれないと(夫が)感じていることは、やっぱり側で見ていたらわかるので、申し訳ないことをしたなと。お互いにちょっとしょんぼりしている時期もありましたし。

 子どもができるまでは夫婦ふたりの生活でしたし、知晴さんは苦しんで一生懸命やろうとしているのが伝わってきて。子どもが生まれてしまえば、ふたりとも逃げようがないといいますか、「子どものために生きる」というシフトチェンジができて感覚も変わって、いまはだいぶ。

――息がしやすくなったのは、2019年にお子さんが生まれてからですか?

村田 たとえば私の母の場合は、自分自身が嫁いできた身で、子どもができるまでは実家に帰ろうと思えば帰れるんじゃないかという気持ちもどこかにあったと思うんですね。でも子どもが生まれたら腹が据わるといいますか、知晴さんの場合も同じではないにしても、そういう気持ちがあったんじゃないかなと。本人は、子どもがいるいない関係なく、そんなこと思ったことないと怒ると思うんですけど。