――以前のインタビューでは、腹を据えたのは結婚だとおっしゃっていました。
村田 そう思うんですけど、私自身が相手が苦しんでいるところは見たくなくて、子どもがいいひんのやから、離婚してしまったほうが……。
――そこまで?
村田 はい、思いました。疲れているのは見ていてわかりますし。
――知晴さんは料理人ではないところから「菊乃井」に入られて、食が大好きというタイプでもなかったわけですよね。
村田 当時は食べる量もすごく少なかったですし、いろいろ違いすぎて、このまま苦しんではるくらいやったら、こちらから離縁を申し出たほうが(夫が)楽になるんじゃないかなと。人の人生を、縛る権利が私にはないであろう、みたいな。いまなら前の会社に戻れるんじゃないかくらいのことを考えて、それが変に態度に出てしまって喧嘩になったこともありました。子どもができたら、パパがいなくなるなんてあってはならないと思えるようになりましたけれども。
夫の仕事に対して何も言わない理由
――「妻はなんにも言わないです、僕の仕事に対して」ということを、知晴さんが以前のインタビューでおっしゃっていて、あえて言わないようにされているのですか?
村田 なんにも言わないというのは、具体的に何を指してはるんでしょうかね。アドバイスをしないとか?
――毎日敷地内のすべての神様に手をあわせるとか、しきたりのようなことは教わるとおっしゃっていましたが、「菊乃井」の次期4代目としての仕事に対してもっとこうしてほしいとか、そういうことは言われないと。
村田 私は妊娠してから産休と育休に入って、どちらかというとお母さんになっていたのと、子どもが新生児のときはコロナ禍でもあったので、家から出られなくて大人としゃべれないなかで、しゃべれない赤ちゃんのお世話をずっとしていて、家では仕事と関係ないことをしゃべりたいという気持ちはありました。
――あー。
村田 でも向こうは向こうで疲れてはるので、寝てる赤ちゃんを見るだけ、夜遅くに帰ってくるという生活が続いて、そのときに何回か言ったことがあるんですよ。4代目としてというより、もっと休みをとるようにしてほしいって。そっちになってたんですよね、私の脳内から全部が。家族が増えたんやから、これくらいしてくれてもいいじゃないかって。
どこの家庭もそうかもしれませんが、外に出て仕事をされている男性からすると「家にずっといたんやからこれくらいやっとけよ」みたいな歪みが、「菊乃井」だからとか関係なく、あると思うんです。少なくとも新生児のときはそう感じましたし、言わんでいいことをこっちも言ってた部分はあるんですけれども。

