同じホテルで、1日に3~4人を相手することも……
土日のみの限られた稼働で、平均して月に12万~13万円の収入を得た。1日に3~4人の男性を相手にすることも珍しくなかった。1日で効率よくおカネを得るために、同じラブホテルの中で、部屋だけを変えて行為を済ませることもあった。
幼いころから、母や周囲から褒められた記憶はほとんどない。容姿に対してのコンプレックスも感じていた。だが、自らの性を売るなかで、ひとときでも「可愛いね」と褒め言葉を向けられることは、山田の自尊心を高めた。
生活に余裕ができたことで、美容や洋服にカネを使うようになり、それに伴って客も増えるという循環が生まれていく。
「世の中ってこんなものなのか」
どこか達観したような感覚を、山田は17歳にして得ていた。
山田は援助交際と並行して、高校レベルの勉強や資格取得に励んだ。それでも、「真面目に生きたところで、自分のような人間にまともな就職先はない」という感情は根強かった。将来の夢も特にない。日々の暮らしのなかで、“嫌気”や“惰性”といった感覚に襲われることが増えていった。
しかしある夜、母と一緒に鑑賞していたテレビ番組で紹介された本に、どういう訳か無性に惹きつけられた。アンソニー・バージェスが1962年に発表した小説『時計じかけのオレンジ』だ。
後に巨匠スタンリー・キューブリックが映画化したことで広く認知された同作は、半世紀以上が経過した現代でもカルト的な人気を博す。テレビ画面には、「犯罪者に人気のある書籍」と紹介するテロップが流れていた。犯罪者の心理状態を解説した番組は、彼女の心に深く刺さった。
「お母さん、犯罪者の気持ちってどんなものなのかな?」
