環境省と農林水産省が「生態系被害防止外来種リスト」を改定するにあたって、これまでは野生に限られていた猫の対象を拡大する方向で最終調整に入っていることが話題を呼んでいる。今後は、イエネコが「防除推進外来種」に位置づけられる(屋内で適切に飼育されている猫は防除の対象外)。

 月刊誌『文藝春秋』の巻頭随筆では、奄美大島のマングース根絶に尽力した奄美群島国立公園管理事務所前所長・阿部愼太郎さんが、猫が生態系におよぼす悪影響について懸念を語っている。

◆◆◆

ADVERTISEMENT

マングースが好んで食べたのは…

 鹿児島県の離島、奄美大島の「あかさき公園」に約30頭のフイリマングースが放たれたのは1979年のことだ。毒蛇のハブを駆除するためだったと言われている。だが、マングースが好んで食べたのは危険なハブではない。農作物や島の無害な在来動物だった。

奄美群島国立公園管理事務所前所長の阿部愼太郎さんは、36年にわたって奄美大島のマングース問題と対峙してきた ©文藝春秋

「島のマングースが増えてしまい、畑が荒らされるので困る」と、その実態を農業を営む知り合いから聞かされ、88年に奄美大島のマングースの生態を手弁当で調べ始めた。当時の私は、東京の獣医大学を卒業した後、恩師の和(にぎ)秀雄先生からの誘いで、奄美大島の民間研究所に入所したばかりだった。89年には「奄美哺乳類研究会(通称・あほ研)」を作り、仲間とともに捕獲調査を進めた。調査を始めた頃は、手作業でマングースを安楽死させるので、辛い想いをしたものだ。「この一頭を殺すことで、他の命が救われる」と自問自答した日もあった。あほ研でアマミノクロウサギなどの固有種にマングースが影響を与えていることを報告すると、当時の環境庁や鹿児島県がマングースの現状把握に動き始めた。

アマミノクロウサギ ©KhunTa/イメージマート

 その後、私は環境庁(当時)に転職し、2001年からマングース対策の仕事を始めた。05年には、専従職員による「奄美マングースバスターズ」を立ち上げ、3万個に及ぶ「T字型筒罠」の展開、マングース探索犬の導入など、マングース根絶に尽力してきた。