優れた作品も配信プラットフォームによっては世に埋もれかねない昨今。現在、WOWOWオンデマンドのみで配信中の『連続ドラマW 災』は最たる例だ。TVドラマやネトフリ配信作と違い、この作品を見た人は少ないかもしれない。全6話のドラマ版を再編集した『災 劇場版』も劇場公開されたが、本作の醍醐味は「連続ドラマ」という形式でなければ味わえないのだ。だから断言しよう。このドラマを見るために今すぐWOWOWオンデマンドに加入すべきだ。10年に1本級の価値がある作品だと思う。
物語は“地震”から始まる。何の前触れもなく示される不穏な揺れ。この地震は後の展開と直接、関係はない。だが、本作のテーマを象徴する重要なファーストシーンだ。早朝、安達祐実演じる女性が向かうのは浜辺の大衆食堂。同僚との会話から、どうやら彼女の夫は3ヶ月前に失踪したらしい。定食の代金を支払う漁師の「男」、香川照之が一瞬だけ映る。そして、次のシーンで安達祐実は……死体となって海に浮かんでいた。ここまでわずか5分。ただただ呆気にとられる。
印象的な「災」の字が浮かぶタイトルバックを挟み、舞台は打って変わって都会に。家族関係や受験の悩みを抱える女子高生が通う塾の講師として香川演じるあの「男」が再び現れる。親身に進路相談に乗る男。だが翌朝、女子高生は無残な転落死体で発見される。あの「男」が現れるとなぜか不吉な災いが続発するのだ。
本作はオムニバス形式のように1話ごとに全く異なる物語・舞台・登場人物で展開するが、決まって香川演じる「男」が現れ、罪なき人々に不幸が訪れる。果たして「男」と不可解な変死事件の間に因果関係はあるのか。考えずにはいられない人間の性(さが)を刺激する、他に類のない設定だ。
本作で脚本・監督・編集を務めるのは今、世界が注目する監督集団「5月」の関友太郎と平瀬謙太朗。
「手法がテーマを担う」
という哲学のもと、『ピタゴラスイッチ』などで知られる佐藤雅彦と共に新たな映像手法や作品構造から自ずとテーマ(主題)が浮かび上がるというアプローチを実践している。本作も彼らならではの斬新さが際立っている。1話ごとに区切りながら続く「連続ドラマ」の“断続性”に注目。そこに正体不明の「連続殺人鬼」という設定を重ねたらどうなるか。言葉遊びのような柔軟な発想から、1人の役者が1話ごとに全く異なる「男」を演じるという前代未聞の設定が生まれた。全6話で実に6役を演じ切った香川照之の怪演ぶりは圧巻のひと言。内田慈、藤原季節、じろう(シソンヌ)、奥野瑛太ら芝居巧者のバイプレイヤーを各話のメインキャストに据える英断も、この設定がなせるわざだろう。
そして、何より称賛すべきはこうした手法によって結果的に普遍的なテーマが描かれている点だ。通奏低音のように響く「男」とは何者かという問い。彼は連続殺人鬼ではない。その存在は地震のようにある日突然襲いかかる“災い”そのものなのだ。日頃の行いとは関係なく、無情、不条理、無慈悲に降りかかる災厄を「男」として描くという大胆な発想。こんなドラマ、世界中探しても絶対に無い。
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『連続ドラマW 災』
WOWOWで配信中
https://www.wowow.co.jp/drama/original/sai/




