今年2月公開のヒット作『木挽町のあだ討ち』に続く、時代劇×ミステリー。しかも密室。そのうえ巨匠・黒沢清監督の初時代劇。話題は豊富ですが、世間はサッカーW杯に大熱狂。果たして、映画館に人はいるのか?
今週のターゲット『黒牢城』
〈あらすじ・概要〉織田信長に反旗を翻し、有岡城に籠城した武将・荒木村重(本木雅弘)。密室と化した城内で次々起きる不可解な事件の謎に、土牢に幽閉した敵方の軍師・黒田官兵衛(菅田将暉)と挑む。四大ミステリランキングを初めて制覇した米澤穂信の小説を、黒沢清監督が自身初となる時代劇として映画化。147分。公開中。
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時は「FIFAワールドカップ2026」で日本とチュニジアが激戦を繰り広げる、まさにその頃、新宿ピカデリーへ。日曜昼過ぎ、リアル観戦がしやすい貴重な機会とあって「どんな話題作でもさすがに空いているだろう」との予想は外れ、いい席は予約でほぼ完売! 焦りつつも映画ファンとしては頼もしさを感じてしまいました。
また、これにはタイムリーな追い風も。本作公開の前週、6月14日に放送されたNHKの大河ドラマ『豊臣兄弟!』の内容が年代的にどんぴしゃ。映画の舞台である有岡城に、軍師・黒田官兵衛が乗り込んでくるという展開。「描かれ方の違いを見てやろう」と歴史ファンが詰めかけた模様。思わぬ援軍とはこのことですね~。
さて、本題。あらすじは右記の通りなんですが詳細に説明すると紙幅が足りないので、歴史に疎い方のために主人公・荒木村重のキャラクター紹介をば。気に入らない者は女子供、僧侶ですら殺してしまうという織田信長に対して、村重の異名は“殺さぬ大名”――つまり人格者? いいえ、“こじらせ系”なんです。少なくとも本作においては。己の理屈や体面に囚われるあまり、やがて真意を見失っていく……。そんな複雑なキャラを本木雅弘さんが、表情や武将らしい所作を駆使して圧倒的な熱量で体現しています。
特にしびれたのは、地下牢に幽閉された官兵衛(菅田将暉)との対話シーン。さながら『羊たちの沈黙』のレクター博士との接見――光と闇を効果的に表現する抑えた色味もいい! 城外に迫り来る敵軍、城内で起きる怪事件、二つの重圧に精神をすり減らす村重。一方、捕らわれの身でありながら話術だけで相手を支配していく官兵衛。この会話劇のスリリングなことよ。
さらに通ぶるなら、やっぱり黒沢清監督らしさにも言及したいところです。黒沢監督といえば、日常の空間に得体の知れない不穏さが侵食してくる“じわじわ系”。それを「時代劇でどう表現する?」と思っていたら、戦国時代の石垣やふすま、そして地下牢といった密室が見事にマッチ。ある意味、超・黒沢清的作品に仕上がっているのです!
ただ、登場人物が多いうえ、背景を手取り足取りしてくれる親切設計ではないので脳内相関図が渋滞する瞬間はあったかも。でも、前知識があればより楽しめるというのはサッカー観戦と同じかと。各々ぬかりなく予習めされよ!



