6月22日、イギリスのキア・スターマー首相が辞任を表明した。
スターマー氏は、2019年、総選挙で歴史的大敗を喫した労働党の党首に選ばれると、2024年の総選挙では地滑り的な大勝で、14年ぶりに保守党からの政権交代を果たした。しかし、首相となると支持率を失い、スターマーおろしの気運が日々、高まっていた。後任には、アンディ・バーナム前マンチェスター市長が確実視され、労働党の党首選が無投票となれば7月中旬にも、新首相に就任するとみられる。
スターマーおろしの背景には何があったのか? イギリス在住30年のライター・ブレイディみかこ氏と、思想家・内田樹氏が、最新情勢について語り合った。
◆ ◆ ◆
右派政党のリフォームUKが大躍進
内田 最近(イギリスで)ホットな話題は何ですか?
ブレイディ なんといっても、地方議会選挙(5月7日)でナイジェル・ファラージ率いる右派政党のリフォームUKが大躍進を果たしたことです。2018年に誕生し、今回は総議席5036のうち3割近くの議席を獲得し、一方で与党の労働党は大幅に議席を失いました。左派の緑の党も躍進して、もう労働党・保守党の二大政党制は終わり、マルチパーティ・デモクラシーの時代に突入したとしきりに言われています。
この労働党の大敗を受けて、現党首のキア・スターマー首相おろしの気運が高まっていて、次期党首の最有力候補と言われるのがマンチェスターのアンディ・バーナム市長です。
内田 マンチェスターの市長さんがですか?
ブレイディ はい。彼はイギリスのラストベルトのような北部で、労働党の政治家にしては珍しく人気があるんです。コロナ禍の時など各都市の市長と連携し、政府に追加支援を出させたりして「キング・オブ・ザ・ノース(北部の王)」と言われるくらい人望がある。今年初めにライバルのスターマー首相に国政に出てくるのを阻止されましたが、今回の地方選の大敗を受けて党内外でバーナム待望論が盛り上がり、ついに下院の補欠選挙に出馬します。
ここ数年、スターマー首相は“左派切り”を推し進めてきました。前党首のコービンを粛清し、映画監督のケン・ローチのような左派をどんどん追放してきたので、ピュアな左派の人たちは今の労働党が大嫌いです。現労働党なんて解体してしまったほうがいいという人たちまでいる。ただ、私は移民の当事者だから、そこには同意できない。排外主義で厳しい移民政策を掲げるリフォームUKに政権をとられたら、それこそ一家離散の危機ですから。

