年金月14万円の生活から「通院一発で1万円」が吹き飛ぶ現代の医療貧乏。胃がんを患う向井治彦さん(69・仮名)の闘いは、過酷な「日々の節約」へと続く。

 半額惣菜や冷風扇で徹底的に固定費を削る中、脳裏をよぎるのは、不仲で疎遠な娘の存在と70代への不安。「目標は75歳、あっけなく逝きたい」と語る老後のリアルを、増田明利氏によるルポルタージュ『今日、年金暮らしになった 定年を迎えた17人のリアルな老後』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。なお、登場人物のプライバシー保護のため、氏名は仮名としている。(全2回の2回目/最初から読む

写真はイメージ ©getty

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ささやかな楽しみは⋯

 医療費は必要不可欠だと思うが、1日で1万円の出費はきつい。

 こんな日の夕飯はアジフライ1枚とカット野菜の玉ねぎサラダ半袋、それにインスタントみそ汁だけ。夜遅くに小腹が空いてくるときは、100均店で買っておいた煎餅やビスケットをかじって我慢している。

「最近はそんなに腹が減ることはありません、身体を動かすことも少なくなるからね。顔色が悪くなったとか体重が減ったということはありません。ガツガツ食べて糖尿になったらまた医療費がかかるからちょうどいいんだよ」

 胃がんになる前はアルコールも好きで、毎晩缶ビールか缶チューハイで晩酌していたが、今はほとんど呑まない。

「術後1年経ったときに先生から、お酒は解禁、ただし週1度でビールのロング缶1本だけと言われたんですが、すっかり弱くなっちゃった」

 以前だとビールは大瓶1本、チューハイはアルコール度数9度のロング缶を呑んでも深酔いすることはなかったが、今はすぐに眠たくなってしまう。

「最近は年金が入ってきたときと、何かいいことがあったときだけしか呑むことはない。スナックや居酒屋へ行くことはなく家呑みだね。近所のスーパーで500mlの発泡酒と200円前後のお惣菜を1品買って450円ぐらい。これで満足、週末だけのささやかな楽しみだ」