埼玉県越谷市で一人暮らす向井治彦さん(69・仮名)。妻を亡くし、年金月14万円の生活だが、2年前に患った胃がんの医療費と物価高が重くのしかかる。現役扱いの「3割負担」は重く通院のたびに1万円札が消えていく。
知られざる現代の“医療貧乏”のリアルを、増田明利氏によるルポルタージュ『今日、年金暮らしになった 定年を迎えた17人のリアルな老後』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/続きを読む)
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お金が出ていくことばかりで嫌になる⋯
一昨日、市役所の課税課から届いたのは原付車の税金納付書。今日は夕方に半年分の町会費の集金が来た。月末は大学病院で半年に1度の定期検査。まったくお金が出ていくことばかりだと嫌になる。
金属加工会社、食品工場、運送会社などで働いてきた向井さんの年金額は1か月約14万円。いろいろ工夫して足が出ないようにしているが、この2年は物価上昇のあおりで毎月綱渡り。足が出そうなときは蓄えから1、2万円取り崩して何とかしのいでいるということだ。
「前はシニア派遣で週に3日働いていたので、月に10万円ぐらい稼げていた。ネジ工場でネジの仕分けとか、業務用クリーニング工場で洗濯物の回収と配達などをやっていました」
日当は7時間勤務で8800円程度。交通費込みなので実質的には日給8000円といったところ。やっていて楽しくはなかったが、稼がなければと我慢して働いていた。
「ところが一昨年に大きな病気をやってしまって、作業的な仕事はちょっと無理。今は年金だけでやり繰りしているんです」
14万円の年金から家賃とその他の生活経費を払うと、手元に残るのは半分より少し多い程度。生活に行き詰まるほど少ないというわけではないが余裕もない。微妙なところだ。
