私は1984年生まれ、北朝鮮の金正恩委員長と同い年らしいが、現代日本ではすっかりインターネット老人の一員である。
小学校(1991〜1996年度)でパソコン部に入り、中学校(1997〜1999年度)で自宅のネット環境を整え、高校(2000〜2002年度)で「IT革命」と「ブロードバンド元年」を迎え、その後の爆発的なネットの普及を眺めてきた。
そのなかで今なお懐かしく思い出すのは、ダイヤルQ2をめぐる悲喜劇である――。
Qちゃんの爆誕の瞬間
「やばい、エロサイトのアイコンが消せない!」
自宅の電話に出るや否や、いきなり同級生が叫んだ。2000年、高校1年時のことだ。
「もうすぐ親が帰ってくる! 削除する方法を教えてくれ!」
電話の主・A君は、親のパソコンでアダルトサイトを閲覧していたところ、勝手にソフトウェアがインストールされ、デスクトップのアイコンが削除できなくなった。そこで慌てて、解決できそうな人間に――つまり私に――電話をかけてきたのである。
同年のインターネットの世帯利用率は34.0%。まだまだ利用者の数は少なく、なにもかも手探りの状態だった。
結局A君は、簡単な操作で難を逃れた。だが、こんな面白いできごとが翌日学校で話題にならないはずもなかった。この日を境に、ネットに詳しい者の間で、A君のあだ名は「Qちゃん」と相成った。