その結果、相手の態度が変わることもあれば、変わらないこともあります。しかし、どちらでも問題はありません。

本質は「相手を変えること」ではない

ここでの本質は、相手を変えることではありません。「あなたが、もう振り回され続けなくてよい状態に戻ること」です。

相手の問題は、相手自身が向き合うべき課題です。それをあなたが背負い続け、身代わりになって苦しむ必要はまったくありません。

ADVERTISEMENT

私たちは「話し合えば分かり合える」と信じたくなります。それはあなたの優しさであり、誠実で自然な願いです。

しかし現実には、すべての関係が対話で改善するわけではありません。対話が成り立たない相手に対しては、真正面からぶつかるよりも、「関わり方を調整する(距離を置く)こと」のほうが、はるかに現実的で健全な選択になります。

真に成熟した境界線とは、次の両方を持てることです。

1.伝えられる相手には、誠実に伝える
2.どうしても通じない相手の場合は、土俵から降りる

これまでのあなたは、周囲の機嫌を守るために自分を犠牲にしてきたかもしれません。しかし、もうその役割を続けなくてもいいのです。

あなたのこころのエネルギーは、他人のために消耗するものではなく、あなた自身の人生を生きるために使っていいものです。

距離を取ることは冷たさではなく、「健全さ」の現れです。そしてそれこそが、境界線を育てた先にある、本来あなたに与えられるべき自由なのです。

自分を労わり、次の一歩へ

ここまでの内容は、決して簡単に身につくものではありません。

これまでの生き方や人との関わり方を見つめ直し、少しずつ変えていく作業には、時間もエネルギーも必要です。

ときには「これでいいのだろうか」と罪悪感から迷うこともあるでしょうし、うまくできない自分に戸惑うこともあるかもしれません。

それでもあなたは、すでに大切な一歩を踏み出しています。

「自分を守っていい」「他人のために消耗し続けなくていい」という感覚に触れ始めていること、それ自体が未来を変える最大のターニングポイントです。

田所 俊作(たどころ・しゅんさく)
臨床心理士・公認心理師、こころのケア研究所 SHINKA 代表カウンセラー
大手製薬会社にMRとして勤務後、社員のメンタルヘルス問題をきっかけに心理系大学院に再進学し、心理職へ転身。精神科病院・心療内科クリニックなど医療領域で8年間の臨床経験を積み、心理検査、心理カウンセリング、精神鑑定等に従事。2023年からオンライン専門の心理オフィスを開業し、現在は認知行動療法・スキーマ療法を軸に、講演やYouTubeを通じて「実生活に活かせる心のケア」を発信している。
次のページ 写真ページはこちら