栃木県宇都宮市の住民を震撼させた、1頭のクマが街の中心部を4日にわたって駆け巡った事件から、1カ月になる。6月9日の捕獲にあたった磯哲雄・宇都宮動物園飼育課長が、ライター・伊藤秀倫氏の取材に、当時、現場で何が起きていたかを明かした。

磯哲雄氏(伊藤氏撮影)

クマが立てこもっている民家の庭へ

 最初に、麻酔銃による捕獲要請が磯氏に出されたのは6月7日の午後だった。だが、駆けつけたときには、クマの姿を捉えることができなかった。捕獲につながったのは、9日13時30分に出された3度目の捕獲要請だった。磯氏は、クマが立てこもっているという民家の庭に到着した。

「『あそこの隅っこにいる』と言われた場所を見ると、たしかに真っ黒な耳だけが見えました。ただ庭のバラや茂み、柱などに遮られて、身体がどっちを向いているのかさえわからない状況でした」

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市内のホテルには注意喚起の貼り紙が(伊藤氏撮影)

 狙いを定めた磯氏だったが、1発目は外れた。麻酔銃は連射ができない。麻酔銃の「弾丸」は、注射器(シリンジ)に羽根がついた構造で、獲物に命中すると、針から薬剤が注入される仕組みになっている。1発ごとに獣医に薬剤を調合してもらい、それを注射器に注入し、ガス圧を調整するという作業が必要になる。15分後に発射した2発目も外れた。

「唯一見えているクマの耳の位置から推測して『このへんに身体があればいいな』と撃ったのですが、やっぱりダメでしたね」