——しかもなかなか結果が出ないと辛いですよね。
千種 お医者さんから「1年くらい続けると採卵できる可能性がある」と言われて1年ほど排卵誘発剤を続けたんですけど、一度も採卵できなくてその頃から「自分にはもう卵子がないのかもしれない」と薄々思いはじめました。
——不妊治療を止めて出産を諦めるという決断は本当に難しいと聞きます。
千種 「次こそは」って毎回期待を持ち続けることも苦しくて、白黒はっきりさせたい気持ちはありました。それに治療費も高くて、一番多い年は200万円かかりました。報われるかわからない、しかも可能性が低いことにお金を使い続けるのが苦しくなってきて、先生に相談したら卵巣を取り出す手術があると教えてもらいました。
——卵巣を取り出す?
千種 2つある卵巣の片方を取り出して一部の組織を切り出して、その中に卵子のもとになる原始卵胞があるかどうかを調べる手術で、そこに原始卵胞があればもう片方の卵巣にも残されている可能性があることがわかる。逆になければ、もうかなり難しいことがハッキリしてしまう。30歳にもなっていないのに自分が子どもを産めないと直面するのも怖かったんですけど、悩んでる間にも卵胞は少しずつ減っていくから確認するなら早い方がいいと思い、29歳のときに手術を受けることにしました。
——卵巣の摘出というと大手術なのではないですか?
千種 全身麻酔で、入院は3泊4日でした。それでも職場には病気のことは言わず、「用事があるので休みを取りたい」とシフトの調整だけしてもらいました。手術の5日後にはスタジオで天気予報の仕事があったんですけど、痛みで歩くのが遅くなっちゃうので、スタッフさんには「空手で足を怪我した」と伝えて、痛みに耐えながら笑顔で天気予報の原稿を読みました。隠し通すと決めたのは自分なので長く休めないし、体調が悪いことにも気づかれたくなくて我慢するしかなかったんです。
取り出した組織片の中に、原子卵胞は1個もなかった
——その後、検査の結果は。
千種 手術の1カ月半後に病院へ行って結果を聞いたんですが、取り出した卵巣の一部を切り出して原始卵胞があるかをチェックしたけれど、その中には1個もなかったと言われました。
——1個も……。
千種 ただお医者さんは卵巣全体を見たわけではないので「原始卵胞はありません」とは言わないんです。もう片方の卵巣にはもしかしたらあるかもしれないけど、あったとしてもそのまま不妊治療に使えるわけではないです。チェックする部分を増やせばまたお金もかかってくる。「2年弱のあいだ排卵誘発剤を使ったけど一度も採卵ができず、卵巣を半分取り出して見たけど原始卵胞がない」という状況で、不妊治療を続けるか諦めるかの選択を迫られました。

