「俺をクソ野郎だと思ってるらしいですね」――初対面の記者にそう放ち、自身を描いた映画には強い不満を漏らす。さらに公開対談では大汗をかいてパニック状態に……。
著名IT記者カーラ・スウィッシャー氏の新刊『世界を壊したビッグテックの悪党ども』(訳者:新田享子/発行:講談社)より、当時26歳のマーク・ザッカーバーグが見せた「知られざる素顔」に迫る。(全2回の2回目/最初から読む)
◆◆◆
ザッカーバーグの被害者意識
インタビュー直前の食事の席で私の隣に座ったザッカーバーグは、まもなく公開されるこの映画について動揺を隠さず、特に、自分がハーバード大学の同級生ウィンクルボス兄弟からソーシャルネットワークのアイデアを盗んだと描かれていることに不満を抱いていた(ちなみに、ボート競技のチャンピオンでもあった、この見目美しい双子の実業家はのちにフェイスブックから受け取った和解金をもとに仮想通貨取引所を立ち上げているので、彼らのために涙を流す必要はない)。
映画の中でのザッカーバーグの描かれ方について、フェイスブックはハリウッドの映画会社幹部に正義を振りかざし、うるさく苦情を申し立てたが、それは当然、映画への注目をさらに高める結果となった。私はザッカーバーグに笑い飛ばすよう助言し、プレミア上映会に出席して、自分を演じた俳優ジェシー・アイゼンバーグとのハグさえ勧めた。
「マーク、自分がどう世間に見られるのかは自分で操作したほうがいいよ。どのみち映画は上映されるんだから。最終的には、映画に関わった誰よりも、あなたは金持ちで有名になるんだから、気にしない」と言っておいた。
のちにザッカーバーグはこの一件を笑い飛ばし、アイゼンバーグと共に『サタデー・ナイト・ライブ』にも出演したが、カンファレンスの時点では、そうした心境にはいなかった。
「僕を映画で描かれているような奴だと世間は思うにちがいない。世間は画面に映るものを信じるから」としわひとつない顔をしかめたザッカーバーグはまだ26歳になったばかりで、人生は長いという感覚もなく、これからは何をするにも詮索の目を逃れられないことへの心の準備もない。心の動揺ぶりが身体にも現れて、まるでインフルエンザの症状が出はじめた人みたいになっていた。
