Amazonが最初に売ったのは「本」だった。しかし創業者ジェフ・ベゾスは、決して読書家だったわけではない。彼が本を選んだ裏には、驚くほど冷徹な「計算」があった――。名物IT記者が間近で見たベゾスの容赦なき本性、ビル・ゲイツとの共通点、そして巨額の赤字を垂れ流しながらも市場を制覇していく狂乱の舞台裏をカーラ・スウィッシャー氏の新刊『世界を壊したビッグテックの悪党ども テック業界“ほぼ”全史の取材録』(訳者:新田享子/発行:講談社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/最初から読む)
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ベゾスとゲイツの元妻たち
グーグルの創業者たちが1970年代生まれであるのに対し、ベゾスは1960年代生まれで世代が違う。生まれつきのエンジニアタイプでもなかったため、Eコマースには分析的なアプローチで取り組んだ。
まずネットで簡単に販売できる商品のリストを作成し、書籍に目をつけた。特に本好きだったわけではない。世界中で売られている商品だったからだ。書籍は安価で、タイトルも豊富だし、発送後の追跡もしやすい。当時からベゾスは愛想の良いイメージとは裏腹に非常に冷徹で、ひたすらアマゾンを前進させるという高い目標を達成するために計算していた。
シリコンバレーのIT企業が従業員を甘やかして遊び場のような職場づくりをしていたのとは対照的で、アマゾンには厳しい職場文化が浸透していた。創業当初からアマゾンには押して押して押しまくるような企業精神があって、それはビル・ゲイツがシアトル近郊のレドモンドにあるマイクロソフトで築いた、陰気で、よく秘密主義的とも言われる企業文化と似ていた。ただし、気むずかしさを前面に出していたゲイツとは違い、ベゾスは公の場ではその情け容赦のない性格を抑えていた。
記者としては平均よりも冷徹なビジネス思考を持っていた私は、ベゾスとの会話では安心感を覚えた。彼は社交的で人づきあいがきちんとできる人だったし、明らかに打算的でも、他のテック起業家とは違って「私は世界を変えている」などと戯言を言わなかった点を評価した。
彼は自分の事業に対して多大な情熱を持っていたが、息を切らすほど熱狂はしなかった。
