「脱いだほうがいいかも」
しばらくすると、これはさすがにまずいと気づいたのか、「やっぱりフーディを脱いだほうがいいかも」と折れた。防護服を脱ぐと、脇の下から背中にかけて汗じみが広がっているのがあらわになった。私は雑談で彼を落ち着かせようとした。
カーラ あたたかそうなフーディですね。
マーク 分厚いんですよ、会社のフーディなんで。裏に会社のミッションが印刷されているんです。
カーラ ええ! なんて書いてあるんですか? 「世界を……」
マーク 「世界をよりオープンにつなぐ」です。
カーラ あらら、まるで秘密結社ですね。みなさん、見てください。「世界をよりオープンにつなぐ。ストリーム。グラフ(訳注:人間同士の結びつき)。プラットフォーム」ですよ。そして真ん中に奇妙なマークがありますね。これは飾りなんでしょうけど。
会場に笑いが広がり、ザッカーバーグが平静を取り戻してインタビューを続けられるようになると、安堵のため息が聞こえてきた。
後日、この件についてはザッカーバーグからウォルトと私に丁重なメールが送られてきて、インタビューへの感謝の言葉さえ添えられていた。あのときの痛ましい姿を捉えた写真がテック業界に瞬く間に広まったのを考えれば、感謝する必要はなかったのだが。あの対談はCEOとしての踏ん張りどころだった。なのに、汗だくになるというめずらしい失態を晒してしまった。しかし、私と顔を合わせているときの失態はこれだけではなかった。