すぐ近くに“理解者”がいた

 役者の事務所に所属になった以上は、芝居に専念すべきなのだろうか。星野は不安になって社長の長坂まき子に尋ねた。

「僕は音楽もやっているんですが、それでも大丈夫なんでしょうか?」

「そっちの方が面白いじゃない」

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 実際、すぐ近くに“理解者”がいた。宮藤官九郎である。脚本家・俳優として活躍する彼は、「グループ魂」としてバンド活動も精力的におこなっていた。星野は「宮藤さんのそういうところを見てきたので、似てるっていうか、真似してる部分はあるかもしれない」と語り、宮藤も、星野を他の後輩とは「もう1個違う関係にある」と述べている。

宮藤官九郎 ©文藝春秋

「(星野が)単純に役者やってるわけじゃないって最初からわかってるから、親近感じゃないけど、役者だけやってる人たちとは接し方は最初から違ったんだよね。(略)役者としてほかの人と同じように見ようとしたら、なんかやっぱり違うんですよね」(「ROCKINʼON JAPAN」2013年7月号)

 そうして星野は宮藤が演出する舞台に役者として出演するだけでなく、劇中音楽も任されるようになっていった。映像作品でも宮藤官九郎脚本の映画『69 sixty nine』(2004年)、ドラマ『タイガー&ドラゴン』(2005年、TBS)に出演を果たした。

 一方、事務所に所属した最初の面談で星野は「文章の仕事をしたい」と伝えた。だが、事務所の人からは「そんなの無理、無理」と一蹴された。「書くことをちゃんと仕事にしないと、上達しない」と考えた星野は諦めずに、自ら知り合いのライターに編集者を紹介してもらい、「なんでもいいから書かせてください」と“営業”し、最初は200字程度のコラムを寄せるようになった。それが400字の連載になり、やがて2000字になって2009年には初のエッセイ集『そして生活はつづく』として一冊の本にまとまった。

 その間、役者としても着実にキャリアを重ねていた。バナナマンや生田斗真らと出会う『アキハバラ@DEEP』(2006年、TBS)やドラマ初主演となる『去年ルノアールで』(2007年、テレビ東京)といった大根仁演出の深夜ドラマでカルチャーに敏感な人たちの心を掴んでいった。