すべてはここから始まっていた
2015年、編集のリャオ・チンソン(廖慶松)は、「短縮を求められたが、どうしてもカットできなかった」と振り返っている。編集中、ヤンに「短くできないか」と尋ねたところ、ヤンは笑って去っていったそう。長尺での公開を支えたのは、プロデューサーであり、のちに「台湾ニューシネマの父」と呼ばれる中央電影公司のミン・チー(明驥)だった。
まるで集大成のようだが、実際にはここからすべてが始まっていた。長編デビュー作である『海辺の一日』が、ここ日本では最後に劇場公開されるという事件は、さながらヤンが生涯取り組んできた〈時間〉というテーマを象徴するようではないか。
『海辺の一日』
佳莉(ジャーリィ)は、小さな町の医師の娘として、親への服従を重んじる伝統的な価値観のもとで育った。父の権威に逆らえず、愛を失っていく兄・佳森(ジャーセン)の姿は、彼女に深い衝撃を与える。やがて佳莉は、父が望む結婚を拒み、同級生の徳偉(ドゥウェイ)との結婚を選んで家を出る。一方、佳森の元恋人である蔚青(ウェイチン)は、留学先のオーストリアから帰国した才能あるピアニストとして活躍していた。佳莉の自由な決断に憧れを抱いていた彼女だったが、佳莉の結婚生活は、次第に理想とかけ離れたものになっていく。ある日、佳莉は警察に呼び出され、海辺へ向かうことになる。そこで彼女は、夫との歳月、自分が選んできた人生、そして見ないふりをしてきた感情と向き合い始める。過去をたどるなかで、彼女の中に封じ込められていた時間が、少しずつ姿を現していく。
監督:エドワード・ヤン/出演:シルヴィア・チャン、フー・インモン、メイ・ファン/1983年/台湾/167分/配給:ツイン/© 2010, 2024 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved. /7月10日(金)より全国公開

