原因不明の顔や歯の痛みが絶えず襲う『特発性(とくはつせい)口腔顔面痛』。患者の9割が女性で、そのほとんどが閉経後の発症だ。レントゲン写真や口腔粘膜には異常が見当たらないため、診断や症状の改善を求めて、いくつもの医療機関をはしごする患者が後を絶たないという。

「特発性口腔顔面痛は大きく分けると、口の中に火傷のような痛みが生じる『口腔灼熱痛症候群(BMS)』と、原因不明の歯の痛みや顔の痛みが持続する『持続性特発性歯痛』および『持続性特発性顔面痛』の2つです。特発性は医学用語で『原因不明の』という意味で、医療現場でも『検査で異常なし』と片付けられがちでしたが、立派な疾患です。近年、痛みを感知する脳の機能の変調で生じることが分かってきました」

 そう語るのは、静岡市立清水病院口腔外科の井川雅子歯科医師。1990年から同院で口腔顔面痛の外来を担当し、著書『口腔顔面痛がわかる本』(共著)も持つ口腔顔面痛の第一人者だ。

井川雅子歯科医師

 BMSは人口1000人に1人、特発性歯痛・顔面痛は1万人に3人の割合で存在するとされている。こう聞くとそれほど多く感じないかもしれないが、悩む人は決して少なくない。

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「日本の人口に当てはめて単純計算すれば、BMSだけで約10万人。BMSは若い人には起こらないことや、歯痛や顔面痛も含めれば、もっと多くの人が、今この瞬間も痛みに耐えていることになります。私の外来を訪れた患者さんのうち、半数近くが特発性口腔顔面痛ですし、ドイツの大学病院のデータでも頭痛・顔面痛外来の3割以上がこの疾患です。決して稀ではない疾患なのです」