マイケルの恩人が演じた伝記映画『ビリー・ホリデイ物語/奇妙な果実』

『ビリー・ホリデイ物語/奇妙な果実』©Photo12 via AFP

 その公民権運動のプロテストソングとなったのが「奇妙な果実」だ。リンチによって吊された黒人の姿=奇妙な果実をモチーフとしたこの歌を歌ったビリー・ホリデイの伝記映画が『ビリー・ホリデイ物語/奇妙な果実』(72年)である。

 本作でビリー・ホリデイを演じたのは、マイケルが母や姉のように慕っていたダイアナ・ロスだ。

 ジャクソン5がモータウンでリリースしたデビューアルバム『帰ってほしいの』は原題を『Diana Ross Presents The Jackson 5』という。これはモータウンのプロデューサー、ベリー・ゴーディが、「ダイアナがジャクソン5を発掘した」という体裁をとり、スプリームス脱退とソロ転向を控えていたダイアナとジャクソン5、それぞれに箔をつけるための戦略だったようだ。

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 そうしたなかでモータウンは伝記映画『ビリー・ホリデイ物語』を制作、ダイアナを主演に据えたのである。

 ホリデイは貧困の幼少期、売春宿での強制労働を経て、クラブで歌っていたところを見いだされた伝説のジャズシンガー。ダイアナとは生まれも育ちも、容姿も歌唱法も違う。しかもダイアナは演技経験皆無。当然ながら批判が噴出した。

 だが、彼女はその批判を演技と歌で黙らせた。たしかに「ビリー・ホリデイそっくり」ではない。だが、麻薬やアルコールに溺れながらも命を削って歌うビリー・ホリデイのエッセンスを集約させ、彼女の魂を宿らせることに成功したのだ。

 この映画によって、ダイアナはアカデミー賞主演女優賞にノミネート。サントラ盤のヒットによってビリー・ホリデイを知らない世代にも再評価されるに至った。