スーパースターの孤独『ロケットマン』

『ロケットマン』©Collection ChristopheL via AFP

 ボウイの「スペイス・オディティ」に影響を受けたとも言われる名曲が、「ロケット・マン」だ。宇宙でひとり命を燃やし尽くさんとする宇宙飛行士の孤独を描いたこの曲は、エルトン・ジョンのライブの定番となっている。

 それをタイトルにした伝記映画『ロケットマン』(19年)は、エルトン自身が製作総指揮を務め、彼の名曲で半生をつづる「ミュージカル・ファンタジー」と銘打たれている。

 だが、「ロケット・マン」という曲同様、映画で描かれるのもエルトン・ジョンの孤独な人生だ。

ADVERTISEMENT

 今でいう毒親のもとで育ち、ゲイであることを自覚したエルトンは、常に寄る辺なさを感じて生きていた。そんななか作詞家バーニー・トーピンと出会い、小さなアパートで「僕の歌は君の歌」を生み出す。

 そこから恋人兼マネージャーのジョン・リードの力もあってスターダムを駆け上がるが、ステージ上のド派手なキャラクターと本当の自分との落差に苦しむ。さらにリードからの虐待に苦しみ、ドラッグに溺れていく。挙げ句に浮気までされ、ついには自殺を図ってしまう。誰がこの苦しみをわかってくれるのか……。

 映画の白眉は、その挫折から復帰し、ドジャー・スタジアムに集まった大観衆を前に行われたライブシーンだ。

 エルトンを演じるタロン・エガートンは、ラメ入りのユニフォームを身にまとい、これまでの孤独を振り払うかのように笑顔で「ロケット・マン」を歌う。そして、観客を見つめて立ちあがると、空へ向かって……。

 この映画を通じて、タロン・エガートンは吹き替えなしで歌っている。もちろん、声質は違うが、その歌にはエルトンが抱えてきた苦悩がにじみ出る。文句なしの名演技である。