奇想天外・前代未聞の出汁
すると店主の高野さんが、そば湯のような液体の入った大きな金属バットをもって窓際にやってきて、「これ何だと思います?」と話しかけてきたのだが、実はそれが「高の」の出汁だったのだ。しかも、作り方が奇想天外・前代未聞。まず、そば湯に「大豆」を入れて煮込みようなものを作る。そこにシイタケやなめこなどのきのこ、鰹節を入れて出汁をとっていく。見た目はまるでそば湯なのだ。
驚きが覚めない中、そばの前に、第9回からあげグランプリで金賞を受賞した「丸丸素揚げ」(390円)と週末限定だがたまたまあった「そばかまぼこ」(480円)を食べることにした。「丸丸素揚げ」はスパイシーにカリッと上がった鶏肉塊で、相当食べ応えがある。「そばかまぼこ」は魚のすり身と蕎麦豆腐が二層になったかまぼこで、随分手間がかかっている一品だ。
つゆの中に大豆やシイタケが……
さていよいよ、「もり蕎麦」(980円)をいただく。そばは西浅草にある「おざわ」の太いそばよりは細く、挽きぐるみ粉で色の黒い田舎そばである。笊にミニ青梗菜、厚揚げ、玉こんにゃく、しいたけがのって、「とろろかけ玄米ごはん」と薬味と一緒に登場する。薬味の下のそば猪口に入った辛汁をみるととにかく驚く。つゆの中に煮込まれた大豆やシイタケが入っているのだ。
そば湯はルチンなどが多く抗酸化作用が強いことが知られている。出汁を味見させてもらったのだが、煮込まれた大豆やシイタケの味がふんだんに広がる。だいたい、出汁にそば湯を使うというのは聞いたことがない。奥出雲の「釜揚げそば」のようにそばにそば湯をぶっかけてかつお節などを載せて食べるというのはあるが、この「高の」スタイルは他にはない。つゆはこの呉汁のような出汁に、本返しを合わせて調整している。
これに太いそばを付けて食べると、そばのうま味が広がり、滋味深い複雑な出汁の香りをそばが纏う。
アツアツの「護摩蕎麦」はこれからの季節にもってこい
店主おすすめの「護摩蕎麦」(1200円)も食べることにした。そばはもり蕎麦のようだが、黒胡麻が大量に入った出汁つゆを固形燃料であたためて、信州の「とうじ(投汁)そば」のようにつけそばとして食べるもので、これからの季節にはもってこいだ。最後に「とろろかけ玄米ごはん」と「たまご」を入れてオジヤにして食べるのがうまい。色的には真っ黒で驚くが、これもまさに養生蕎麦のひとつといえる。
帰り際、高野さんが描いた油絵「いつもと変わらない風景」が目に入った。一時間半の滞在であったが、他にも自家製の合わせみそなども秀逸であった。これからは「カレー南蛮蕎麦」もおすすめらしい。概念を超えた出汁と店主の工夫が織りなす「高の」の世界を是非また、体験してみたいものである。
写真=坂崎仁紀
INFORMATION
亀戸・養生料理 高の
江東区亀戸2-6-1 亀戸二丁目団地 108
営業時間 火~木 13:00~22:00
金 11:30~22:00
土 10:00~22:00
日祝 10:00~16:00
定休日 月曜日(月曜が祝日の場合火曜日振替)
※蕎麦なくなり次第終了
完全予約制(人手が足りず、ご一報いただくと大変助かりますとのこと)
03-6676-9055
http://kameidotakano.wixsite.com/web