今年の東京の夏は異例の酷暑だった。涼しくなってくると、疲れが溜まっていることがよくわかる。カラダをいたわる、養生する必要があると思う。そこで、ふと亀戸にある蕎麦屋を思い出した。「亀戸・養生料理 高の」である。

 少しだけ猛暑が和らいだ9月第2週の火曜日に予約を入れて、ふらっと再訪してみたのだが、そこで、唯一無二の出汁、想像を超えた味に出会うことになった。

亀戸の大きな団地の中庭へ

 夕刻、亀戸駅北口に降り立つ。亀戸天神を正面にみながら、北西の方向に数分歩くと、亀戸二丁目団地が現れる。大きな団地である。中庭は広いコの字状になっており、そこに入って行くと、「高の」は左奥でひっそりと営業していた。

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亀戸二丁目団地の中庭に「高の」はある
団地の中庭でひっそりと営業する「高の」

居酒屋開業後にそば打ち修行

 店主の高野定義さんと奥さんのオスギさん(愛称)が笑顔で迎えてくれた。

「高の」は亀戸二丁目団地の片隅で開業してから6年目になる。高野さんはもともと寿司職人で、魚系の料理が得意だったというが、当初はラーメンのある居酒屋としてスタートしたとか。しかし、営業していくと、思い描いていた魅力的な空間を演出することができなくなってしまう。

 そんな時、常連さんに墨田区文花にある「株式会社霧下そば本家」の元お偉いさんがいて、「それなら、そば打ちを教えてあげよう」という稀有な展開になったのだという。半年以上のそば打ち修行の結果、開業1年後にはそば料理を中心に据えた居酒屋へと変身したという。

ほんのり焦げたそばが美しい「ハムカツ」

 さて、前置きはこの位にして、「高の」の驚愕のそばについて話を進める。予定より早く着いてしまったので、友人が来るまで、店先左側にある、いまはあまり使われなくなった立ち飲みコーナーで0次会を一人で始めることにした。ここから驚愕の世界がスタートすることになった。 

「ハムカツ」(80円)は立ち飲みコーナーのみのメニュー

 まず、激安の「ハムカツ」(80円)を注文すると、分厚いボヘミアソーセージを切り出し、衣とそばの端っこを付けて揚げ始めた。ほんのり焦げたそばの色が美しい出来上がり姿である。店内ではこの「ハムカツ」は注文できないというから面白い。

 そして、「そば焼酎のそば湯割り」(580円)を注文した。これは焼酎をそば湯であらかじめ割って熟成したもので、冷たいのも注文できる。飲んでみるとマッコリのような酸味がある独特の味でおどろいた。

「そば焼酎のそば湯割り」(580円)。マッコリのような酸味が特徴