しかも、例の「遅滞なく」の文言は、政令発令後、ビザの発給を求められたら迅速に対応するように、という話だ。少なくとも今じゃない。
もう一ついえば、ベルリンの壁の検問所は、合法的な「国境通過点」ではあるが、規制緩和の対象外になるはずだった。
なぜここまで、幾重にも間違えたのか。
シャボフスキーに問題の紙を渡したのは、東ドイツの最高指導者であるエゴン・クレンツという人物だった。クレンツは、シャボフスキーが新政令の議論に参加しているメンバーの一人だとわかっていたためか、紙の内容について詳しい説明をしなかった。
ところが、シャボフスキーは激務すぎて、議論の途中で何度も中座してしまっていた。そのせいで、細かい内容や発効時期、さらにはメモの内容のうち今日の時点では黙っておくべきことを把握できていなかった、というわけだ。
……ああ、報連相。発表前に内容を確認し合っていたら、この事態は防げたかもしれない。
新時代の幕が開け、世界3位の経済大国へ
とはいえ、常に過労気味の現場だ。あとから考えれば「なんで聞かなかったの?」と思うようなことでも、抜けてしまうのは想像に難くない。しかもこれ、国中にテレビ放送か。他人のことなのに、なんか胃が痛い。
シャボフスキーの発言後、東ドイツの国民がベルリンの壁に押し寄せた。西側からも人が集まり、ともに「壁」を破壊。東西の人々は、シャンパンを開け、抱き合って喜んだ。
こうして、新時代の幕が開けた。統一されたドイツは、今やGDP(国内総生産)では日本を抜き、世界3位の経済大国になっている。
クイズ作家
三重県生まれ。早稲田大学教育学部卒業および同大学院修了。在学中からクイズ作家として活動を始め、日本テレビ系『高校生クイズ』の問題作成を15年間担当したほか、『頭脳王』『クイズ! あなたは小学5年生より賢いの?』『せっかち勉強』などのテレビ番組や、各種メディア・イベント等で問題作成・監修を行ってきた。2018年より国際クイズ連盟日本支部長。クイズの世界大会では日本人初・唯一の問題作成者を務める。
