プロオーケストラと会社員の二足のわらじ生活に

――その間、フルートは?

上原 趣味の範疇で続けていました。地元のアマチュア吹奏楽団と一緒に演奏したり、ボランティアで演奏をしたり。でも、折に触れてフルートを吹いているとやっぱり「プロになりたい」「音楽で食べていきたい」という夢がふつふつとわき上がる。それで、合間合間にコンクールを受けたり、某有名交響楽団のオーディションを受けたりしてみたものの、そんなに現実は甘くなく、玉砕の繰り返し。

 でも、いろいろやっていたからこそ、横のつながりができて、30歳くらいのときに、「新しくゲーム音楽のプロオーケストラを立ち上げるから、オーディションに参加しないか」と声を掛けてもらいました。私はゲームが大好きだから渡りに船だと思って受けてみると、ありがたいことに合格して。

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――ということは、会社員とゲーム音楽のプロオーケストラの一員という二足のわらじ生活に?

上原 ですね。会社員なので朝9時から夜7時まで働いて、そこから深夜まで楽曲の練習という生活です。プロオーケストラって、本番の1週間ほど前からリハーサルが始まって、その直前に何十曲という楽譜をいただいて練習するんですよね。ですから、日中働いている私は、本番が近づくにつれ寝る間を惜しんで練習するしかない。ですが、「東京オペラシティ」「サントリーホール」「NHKホール」といった有名な会場で、『ファイナルファンタジー』や『ロマンシング サ・ガ』などの神曲を演奏できたのは、とてもうれしかったです。

©︎細田忠/文藝春秋

プロの演奏家として活躍できるのは一握りの世界

――ゲーム音楽のプロオーケストラだけで食べていくというのは、やっぱり厳しいものなんですか?

上原 厳しいです(笑)。そもそもオーケストラの一員として、それだけで生計を立てられる人は、本当に一握りしかいないんですよ。誰もが知っているような某大手交響楽団に所属している人は、それだけで食べていけるけど、そうでない人は自分でレッスンを行ったり、自分でコンサートを企画して集客させたりしないと満足な収入を稼げない。

 ヨーロッパは音楽家の地位が高く、国から職業として認められているので、演奏家として食べていけるんですけど、日本はそうじゃない。音大や芸大を卒業して、一人前の演奏家であっても食べていけないから、途中で音楽をあきらめて会社員になるといったケースも珍しくない。プロの演奏家として活躍できる人って、音大の1学年に何人いるんだろうという世界なんです。