――だからこそ立命館時代の先生は、「やめたほうがいい」と助言していたと。
上原 現実を知っていたんですよね、先生たちは。当時の私は分からなかったけど、続ければ続けるほど、その言葉の意味が分かりました。プロオーケストラに所属していても、アルバイトをしながら音楽活動をしている人も少なくないです。だけど、「音楽家だ」というプライドがあるから、副業をしていたり、派遣社員として働いていたりといったことは言いませんよね。
それに、日本は音楽家の地位が低いからか、「それって結局、道楽の延長線でしょ?」と言われかねない。道楽をしているんだから食べていけないのは仕方ないじゃん……そういう風潮を変えたいという思いを持っている音楽家は、私を含め、たくさんいるはずです。
演奏を依頼され「謝礼はお花でいいですか?」と言われたことも
――たしかにそういった傾向は感じますね。ヨーロッパなどへ行くと、道端でピアノやトランペット、バイオリンなどを演奏している人を見かけますけど、日本ではあまり見かけない。音楽と自然にエンカウントしないというか。
上原 私たちは、音楽を演奏できることも一つの「手に職」だと思っています。美容師さんやお医者さん同様、手に職を持って働く人たち。だけど、なかなかそうは思ってくれず、道楽の一種という位置づけ。それが悲しいんですよ。あるとき、某自治体から「演奏をしてほしい」という依頼が来たんですけど、「謝礼はお花でいいですか?」って聞かれました。
――謝礼がお花だけ!? 宿泊費や移動費は?
上原 ないです(苦笑)。「お花以外に、お弁当代も出しますよ」って言われて絶句しました。信じられないですよね。あちらからすれば、場所を提供するんだから十分だろうという認識なんです。一方、企業様からの演奏依頼はきちんとしているから交渉ができる。裏を返せば、何足かのわらじを履いている音楽家は、コミュニケーション能力がないと上手にやりくりできない世界とも言えるんです。
――なるほど。ただ演奏が上手なだけでは生き残れない……。
上原 もちろん、世界的なコンクールで受賞して、マスコミの皆さんに取り上げられるような人は別です。そういった天才的な演奏技術を持つ人ではない限り、つながりは大事で、実際、音大は楽器の腕を研鑽する場所であると同時に、縦横のつながりを作るという意味でも大きな装置になっている。
