――香水がまさに、役へ入るためのスイッチになっているんですね。
宇垣 そうです。華やかな香水をつけると、ドレスを着たりちょっと肩を出したくなったり。逆に、パリッと糊の利いた綿のシャツを着てそうな感じの役ならスッキリした香りの香水にしようとか、香りによって自分の中の世界観を変えられる気がするんですよね。私の場合、そうやって形から入ったほうが役に入りやすいというのもあります。
――演技において意識されたこともあるかと。
宇垣 声の出し方は考えました。普段の私は滑舌がよくて声も通るほうですが、明日海はどちらかというと陰キャなタイプ。だから、口先だけでボソボソと「わからないです……」って話すような感じかな、と声を組み立てていきました。
原作付きの作品を演じる難しさ
――ご自身とは正反対の役柄を、実に楽しんで演じられているのが伝わってきます。すえのぶけいこさんの作品といえば、可愛らしい絵柄から一転、般若のように顔を歪ませて凄みを見せる描写が印象的ですが、今回はそういった”顔芸”のような演出はありましたか。
宇垣 「もっとすごい顔をして」というような直接的な表現ではなく、「こういう気持ちで相手を見てほしい」と、大谷(健太郎)監督からも北川(瞳)監督からも言われました。
たとえば原作ですごく怒っている表情のシーンがあって、私もカッと怒りのスイッチを入れたら、「ここは怒りではなく、諦めや悲しみなんです」とアドバイスをいただくこともあって。だから、マンガの表情に無理に寄せるということはなかったですね。
――小説と違ってマンガはすでに視覚イメージが存在する分、実写化する際の加減や調整は逆に難しそうですね。
宇垣 とにかくマンガはかなり読み込みました。描かれているキャラクターから逸脱するわけにはいかないけれど、私は生身の人間として演じるわけです。だから、たとえば涙を流すシーンで、描かれている通りにボロボロ泣いてしまうと映像としてはやりすぎになってしまう部分もあるので、フェーダーを上下して調節するように、演技のさじ加減を探っていく感じでした。
写真= 杉山秀樹/文藝春秋
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。
