自分では「藤沢周平みたいなものを書くだろう」と……

――今回は初めて時代小説に挑まれましたが、そもそものきっかけは?

朝倉:児童文学作家のエーリッヒ・ケストナーの『ふたりのロッテ』が好きで、これは別々のところで暮らしていた双子がばったり出会い、それからさまざまな出来事を巻き起こす話です。自分の中にはとにかく双子の話を書きたい、というのがまずありました。

 それから、捨て子というものに関心がもともとありました。現代だと手続き的にいろいろ難しいんですけど、捨て子を養うだけではなく、たとえば、お乳が出ない母親が別の母親から乳をもらうことも含めて、共同で子供を育てる感覚が江戸時代のほうが強いという印象を、資料などを読んで感じていたことも大きかったです。時代小説をやるなら、そういうものが出てくるのがいいだろう、と。

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 デビューした頃から時代小説は書きたいと言っていましたし、藤沢周平さんの作品が好きなので、書く前までは自分の時代小説も「藤沢作品に似ちゃうんだろうなぁ」と思っていたんですよ。ところが、「双子」「捨て子」「見世物小屋」といったキーワードを、担当編集さんに伝えたところ、「藤沢周平に双子に捨て子や見世物って? まったく想像がつかなかった」と今でも言われています(笑)。

『ゾンビ回収婦』で芥川賞を受賞した小砂川チトさんと受賞記者会見に臨んだ朝倉さん

――それが、まさか直木賞受賞作品になるとは……。

朝倉:ほんとに(笑)。でも、ストーリーラインはびっくりするくらい最初から、はっきりと見えていたんです。あとは書き方だけという状態でした。ただ、『けんぐゎい』の執筆中は、すごく作品に入り込んでしまって、きちきちに理論詰めで固めていくのではなく、書き方が、自ずともっと緩みのある絡みつき方をしていった感じですね。