キャリアの中でも間違いなくいちばん大変でした!
――構成面でも大きな作業があったと聞いています。
朝倉:もともと連載の時は、ラストシーンから書きはじめているんです。若い女がひとり死んでいて、双子がいて、その死んだ女を乗せて駕籠が出ていく――単行本化にあたっては、冒頭が最後のシーンになると、主人公のふゆが辿ってきた道がわかりにくいので、全体的に時系列順に書き直しました。
その作業は本当に大変で、本来であればじっくり改稿するのがいいんですが、私が占いの本で「4月が(運勢)いい」って見ちゃったんです。しかも、担当編集さんまで4月の運勢が良かったから、「じゃあ、絶対に4月に本を出すんだ!」となってしまい(笑)。そのために、ゲラになってからの段階で章を移動したり、そうなると初出のルビをふる位置も替わったりで、ちょっと怖いくらいでした。キャリアの中でどのくらい大変だったか聞かれたら、間違いなくいちばん大変でした!
――今後の作品の構想を教えてください。
朝倉:次は、『よむよむかたる』にも登場した、看取りの人、死に伴走する人の物語を書きたいんです。「デスドゥーラ」という、死を控えた人とその家族に寄り添い、心理的・精神的なサポートやケアを行なう専門家がいるんですよ。その世界観を描いた現代もので「この秋からはじめるよ」って言っているんですけど(笑)。
『けんぐゎい』の続きとなる双子の話ももちろん書きます。本作で別々のところに捨てられて、そこで引き取られてというあの2人が、ふたたび会う物語の構想もあります。それは早速その次に書きたいですね。で、その次はまだ決めていないですが、まだまだ書きたいことはたくさん湧きあがってくる気がしています。
朝倉かすみ(あさくら・かすみ)
1960年北海道小樽市生まれ。2003年「コマドリさんのこと」で第37回北海道新聞文学賞を、04年「肝、焼ける」で第72回小説現代新人賞を受賞。05年、両作品を収録した『肝、焼ける』でデビュー。09年『田村はまだか』で第30回吉川英治文学新人賞を受賞。19年『平場の月』で第32回山本周五郎賞を受賞。2026年『けんぐゎい』で第175回直木賞三十五賞受賞。ほかの著書に『ほかに誰がいる』『てらさふ』『にぎやかな落日』『よむよむかたる』など多数

