『OUT』と『けんぐゎい』の共通するもの

――作中で主人公のふゆが、女性たちのための病院「ガストホイス」を作り上げるくだりは圧巻でした。あの構想はどこから?

朝倉:資料を読んでいるうちに、普通に怒りが込み上げてくるんですよ。武家の奥さんというのは、産んだら子供は乳母に育てられて、またすぐ妊娠できるから、次々と生ませられるわけです。そういうことへの怒りもあり、自分が産みたければ産み、育てられなければ子の欲しい親を見つけてやれる、という場所を江戸に作ることは、この小説を書こうと思ってからずっと考えていました。

 実際、江戸時代は亡くなる子供も多いので、人口が増えない期間があり、社会全体で子どもを育てるという機運が高まった時期があったようです。捨て子でもなんでも、育てたらお金をもらえるっていう制度もありました。粉ミルクとかもないから、お乳の貸し借りとか、そういう結構すぐれた助け合いのシステムが実際あって、独身の男性でも養子をとって親になれたりもしたようです。

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――タイトルの「けんぐゎい」は、どういう意味を持っているのでしょう。

朝倉:「けんぐゎい」というのは、世間並みではない人間、圏外の者を指します。全身にひどい痘痕(あばた)があるふゆだけではなく、器量よしだけど逆上(のぼ)せ癖のある妹のりよも、ふゆの朋輩で男より腕力があるつるも、禍々しい性癖でふゆを手籠めにした宗三郎も、この小説に出てくる皆は悉く圏外を彷徨っています。

 これは、桐野夏生さんの名作『OUT』からの影響です。『OUT』を読んでいるあいだずっと、OUTという言葉の持つさまざまな意味がわたしの中を飛び回りました。すごーく単純に言うと、外(に出る)と(道を)外すという感覚がせめぎ合い、もうなんか大変だったんです。それからハンガリーの寒村で起きた、エンジェルメーカー事件(第一次世界大戦中、助産婦が家庭問題に苦しむ女性たちにヒ素を提供し、計画的殺人が次々に起こった)にも関心がずっとあって、この事件もストーリーラインに影響しました。