乳房切除手術はどこでやってくれるのか?
これはなかなかの難問だ。トランスジェンダーで乳房を取っている人はこの世にいっぱいいるはず。その人たちは、どこの病院で手術を受けているのだろうか。そういう人たちの手記を読めば分かるのか。それとも、性別違和の解説本に病院名が掲載されているのかもしれない。
それから数日、仕事が終わって帰宅すると、私はいろいろな方法で病院を探した。しかし、どうしても見つからない。それなら、千葉大病院の乳腺外科を受診して、乳腺外科の専門医にどこの病院で手術を受けられるか教えてもらえばいいのではないか。大学病院を受診するためには紹介状が必要。光はもう17歳なので、小児科から紹介というのはおかしい。では、どうするか。
待てよ。私の後輩に乳腺外科医がいた。彼は研修医の頃、小児外科に3か月間研修にやってきて、私が指導している。その後、乳腺外科専門医になって、今は開業している。その彼とはFacebookでつながっている。私は早速メッセージを送った。オンライン状態になっていたので、その場で返信が来た。
まず、千葉県内にははっきり言っていい病院がないこと。
東京のナグモクリニックは、症例数、安全面、整容性の面からお勧めできること。そして性別違和の患者にも理解があること。経乳輪的乳房切除術をやっており、創部(手術の傷痕)はほとんど目立たないこと。麻酔も安全にかけてくれること。手術は2~3時間で、入院はおそらく1泊であること。学会でもよく発表を見かけること。そして、申し訳ありませんが、料金は分かりませんと書かれていた。
ついに辿り着いたクリニック
そうか。ついにクリニックに辿り着いた。私は後輩にお礼を述べて、妻と光にクリニックが見つかったことを伝えた。2020年7月1日のことだ。新型コロナウイルスのアウトブレイクで世間が騒然としていた頃である。この2週間後、私のクリニックの休診日に、私たち3人は電車に乗って東京に向かった。
クリニックは東京23区のほぼ真ん中、皇居のすぐ西側にあった。7階建の堂々たるビルである。建物はベージュ色でなんだか安心感を与えてくれる。敷地の入り口から玄関までスペースを広く取っており、広々した感じがある。またエントランスもかなり広い。クリニックが我々にウエルカムと言っているようだ。殺伐とした冷たいイメージのビルではなくて、それだけで私はほっとした。
だが、7月の東京は異様に暑かった。私は自分のクリニックがあるので、この先何度も通えない。妻が光を連れて行くことになる。妻は暑さにものすごく弱く、疲れると持病の不整脈が出て寝込んでしまう。千葉の自宅からここまで何度も通うのは、妻には相当負担が大きいなと危惧の念が湧いてきた。
