「強い経済」を掲げる高市早苗首相だが、三菱UFJモルガン・スタンレー証券のシニア・グローバル投資ストラテジストを務める山﨑慧氏は「日本経済はほとんど成長していません」と言う。株高に沸き、政府資産が増加する中で、日本経済の裏側に隠れた“構造的な問題”とは——。
◆◆◆
国家財政を助ける円安とインフレ
なぜ、政府資産は増加したのでしょうか。資産保有者は大きく分けて中央政府と地方公共団体、社会保障基金の三つが挙げられますが、中でも近年、特に増えているのが中央政府と社会保障基金の持つ資産です。中央政府は、為替介入の原資などとして外貨建てで保有する資金「外貨準備」や海外の株式や債券である「対外証券投資」を保有しています。これが、主に円安と株高の影響で時価が上昇しているのです。今年1月に行われた衆院選の演説で高市首相が、外貨準備を運用する特別会計である外為特会について「円安で外為特会の運用も今ホクホク状態」と発言し物議を醸しましたが、まさにそのような状況です。
11年に1ドル=75円で円売り・ドル買いの為替介入を行った際、日本政府は米国債を数多く購入しました。1ドル=約160円の世界となり、現在その価値が倍以上になっています。社会保障基金で言えば、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は国内株を大量に保有しています。株高は「政府セクター」にとって理想的な状況なのです。株高を追求するインセンティブが働き、それを助けるインフレと円安は国家財政にとって明らかにメリットがあります。
ここに今の日本経済が抱える構造的な問題があるのです。確かにインフレが進むことによって政府の税収は過去最大の約84兆円に増大し、国の債務は大きく減少しました。さらに日経平均株価は7万円台を突破し、日本企業の株価が高止まりする状況は続いています。しかしこの間、日本経済はほとんど成長していません。

